第1話 第四部隊
「……ここだな」
しばらく歩くと大きな部屋の前にたどり着いた。紙を見ると確かにここを差している。俺はあの噂が本当でないことを願いながら扉を開ける。
中には以前に試験の時に見かけた隊長、そしてその横には副隊長であろう2人の人間がいた。
「失礼します! 今日から第四部隊に配属されることになりました! アルバ・ウェルドーラです!」
第一印象が肝心だ。俺は背筋を伸ばして出来るだけ大きな声を出す。
「初めまして。では無いわね。今日から貴方の隊長になるリアナ・フェルナンドよ。横にいる2人は副隊長のーー」
「リゼ・ディアナ」
「私はシーファ・ヴィラードだ」
なるほど、髪で目が隠れている方がリゼで、薄紫色の髪のエルフの方がエルナ。よし、覚えたぞ。
「ディアナ副隊長、エルナ副隊長、これからよろしくお願い致します!」
「「………」」
あれ、どうしたんだ? 急に黙ってしまったぞ? 俺は下げていた頭を上げる。
「あの……」
「ふぅ、これで一応形式上の挨拶は終わりね」
「っ……」
すると先ほどまでの優しそうな雰囲気とは一変する。フェルナンド隊長の圧が強くなった気がする。嫌な予感がするな。
「ここからは隊長としてではなく、私自身の言葉よ。私は貴方がここに配属されたことにまだ納得してないわ」
「えっと、ではなぜ俺はここに配属されたのですか?」
「今年の新人は総勢で25名。その中でも最低でも1人は取らなきゃ駄目なの。それでも私はしばらく誰もこの部隊に入れてなかったけど。けど、流石に今回は総隊長から1人は取るように言われたから」
「はぁ、なるほど」
つまりは本当は欲しくもない人材だったけど、上からの命令で仕方なく取ったんだと。
「だから、まぁあなたを選んだのもすごく適当に選んだだけよ。誰が来ても本当に良かった」
なるほどな。要するに本来なら誰もいらなかったけど規律上仕方なく俺を取ったんだと。別に俺はいなくてもいてもどちらでも良いんだと。そういうことか。
「ちなみに私の隊員はここにる者たちだけよ。他に隊員はいないわ」
「……そう、ですか」
通常なら探索隊はもっと大人数だと聞いている。それだけここが変わってるということだ。なんで総隊長はこんな我が儘を許しているんだろうか? 疑問である。
「まぁ、そんなところね。仕事だから必要最低限のやり取りはする。けど、正直に言ってしまえば私たちの部隊はこの3人で足りてるから」
「……分かりました。失礼します」
俺はもう一度頭を下げて部屋を出る。なんであれ、あの噂は本当だったってことは分かった。
「……上等だよ」
思わず手に力が入ってしまう。いきなり会った部下にあんな態度を取る奴らに俺だって必要以上に付き合いたくない。そこだけは完全に同意だ。違う部隊への配属希望は1年後、それまではここで得られる物を自分の力に変えてやる。
「ふぅー。まぁ、むしろ好都合だな。目的を見誤らずにすむ」
そうだ。俺たちは自分の価値を証明する為にここに来た。別にあいつらからどう思われていようが気にしなければ良い。俺は新しい居住地となった宿舎へと向かう。
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