第7話 田舎の猫 覚醒する

 「そろそろ気持ちは落ち着いたかしら?話を続けたいのだけれど……」 

 いけない、つい自分の世界に入り込んじゃった。これは私の悪い癖だ。 


 「あ、はい、すみません、キャティ……」 

 彼女はいたずらっぽく笑いながらこう言った。

 「貴女にとって良いお知らせがあります」 

 嫌な予感……。私の幼馴染みである娘が時々する笑い方に似ている。そして、それを見た後はロクな目に遭わないことを私は知っている。


  「貴女の世界では転生者には転生特典が付随するのよね?」

 いや、そんなルールはない。そもそも転生できるなんて、ラノベの世界でもなければ無理なんだから。


 「その……転生特典とやらはみんな貰えたんですか?」

 私はおずおずと質問する。 

 「いいえ、貴女は選ばれたのよ、その子によってね」 

 彼女の指刺す先にあったのは、アレだった。そう、商店街の福引きなんかでガラガラと回されるアレだ。昨今ではデジタルにとって変わられるソレは、前の世界では珍しくなってきていたはず…… なるほど、確かに私は前の世界でもガチャ運だけは良かった。10回まわすと1回はスーパーレアが当たるという、運営にとってみれば嫌なユーザーだったと思う。

 

 「それで、何が当たったんですか?」 

 「うっふふ~。それはコチラでーす!」

 お姉さん、キャラ崩壊してない?大丈夫?そう言いたくなるのをグッと堪えた私は……それを見て呆然とした。


  その目録みたいな巻物に書かれた転生特典なるものは、いわゆるチートスキルのオンパレード。

 「な、何ですか、これはぁ~っ!?」

 思わず絶叫してしまった。

 

 「さっき転生特典って言ったじゃない?」

  「これだけでこの世界を滅ぼしちゃえそうなんですけどっ!」

 と叫ぶように言う私。


  「大丈夫よ。貴女に与えられるスキルは、この世界における貴女の味方や、この世界を壊しちゃうようなモノには働かないから。」

 彼女はしれっと続けた。


 「敵かどうか迷ったら、取り敢えず殴ってみれば分かるわよ?効いてれば敵、効かなければ味方ね」  

 何なんですか、その疑わしきはぶん殴れという無茶苦茶な理論は。取り敢えず拳で語る世界ってもう末期でしょう? 


 「え?貴女の元いた世界って話し合いでちゃんと解決できてたっけ?」  

 それは言わないで欲しかった……。出来てたら滅びてないのよね、きっと。


  「冗談はさておき、貴女にはこのスキルを受け取らないという選択肢はないのよね。つまり、もう譲渡されていて、返品不可なの。」 

 そうなのか。なんかそれって運命ってヤツ?ちょっと待て。これらのスキルを授け、敵の存在を仄めかすということは…… 


 「私に何をさせようとしているんですか?」

 これはアレか?魔王とかと闘えって事か? 

 「アニメの観すぎよ。魔王なんてこの世界にはいません。」

 いや、そこでアニメが出てくる辺り、アナタも相当なオタ……

  「私は違うわよっ!」 

 速攻で思考を読んで反応するところが怪しいわね。まぁ、いいわ。 


 「じゃあ、何でこんなチート級のスキルばかりなんです?」

 私は誤魔化されないぞという視線を向けて、尋ねた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る