第6話 田舎の猫 思い出す
そうだ、私はかつて『西野麗子』という名前だった。片田舎の街に住んでいて、普通の会社に勤めるどこにでもいるOL。それが私だった。両親は少し離れた町に住んでいたけれど、家族仲は悪くなかったと思う。
その日の私は、いつものように職場の同僚ととりとめのない会話をしていたと思う。そんな時、突如スマホから警報の音が鳴り響いたんだ。
それは某国のミサイル発射の『お知らせ』だった。この『お知らせ』は結構頻繁に来るし、陸地に落ちたこともないので国民のほとんどは慣れっこになっていた。
きっと、ミサイルを発射した方も落ちないように気を遣ってたと思うし、誰もホントに落ちるとは思ってなかった。しかし、落ちるときには落ちるんだな、これが。
そのミサイルは運の悪いことに我が国屈指の特級呪物、三人寄れば何とかなるだろう的な発想で作られた高速増殖炉に落ちた。
この特級呪物は使えないのに廃棄するのにとんでもない費用がかかり、年間の維持費も150億円を越えるという、それ何て罰ゲームなん?って存在。三人どころか何百、何千人という科学者が知恵を絞っても、制御出来なかったこのきかん坊は、この先何十年も封印され続ける運命だった。 でも、この日この特級呪物は世に解き放たれた。空からの使者によって……
制御を失った高速増殖炉は高熱と放射能をまき散らし、我が国に多くの被害をもたらした。そして当事者の国同士が対処に追われているうちに、我が国の同盟国である大国が「うちの植民地に何してくれとんねん!」と介入する。
それに伴い、その大国と対立関係にあった二つの大国が介入し地獄の釜の蓋が開いた。ここまで来るともう誰にも止めようがないよね。そして人類は破滅という名のゴールまで、その道を一直線にひた走ったというわけだ。その頃には私はその世界にいなかったみたいだけどさ。
こうして私は今の世界に送り込まれた。記憶を封印されて。
記憶を封印されていたのは、それがこの世界に受け入れて貰える条件だからだそうだ。まぁ、世界を滅ぼしちゃえるような物騒な知識を持ち込まれちゃかなわないだろうからね。
この世界に来たとき、私が唯一覚えていたのは『西野麗子』という名前だけだった。グリーンフィールドの森の中で老夫婦に保護された時ちゃんと名乗ったはずなんだけど、この世界に来たばかりで私の発音が怪しかったせいか『にじのねこ』と聞こえたみたい。
まぁ、猫人になってたし、私が見つかった時に虹が出ていたそうだからその所為かもしれないね。『虹乃猫』にならなかっただけでも感謝しないと。
あー、それから元の世界から飛ばされる時は、どの世界、どの時間軸に飛ぶかは完全にランダムらしい。そりゃ、自分の世界を滅ぼした難民のような存在を、一つ処に集めたらロクな事にならないのは前の世界でも証明されてるからね、当然だろう。
私の名前に漢字が使われているのも、グリーンフィールドのトイレが洗浄機能付きだったのも、まぁ、そういう事だよね。
ただし、電力で動く道具はない。だって、魔力というもっと便利でエコなエネルギーが存在するんだもん。
それから、どの種族になるかもその世界の理によるようで、今の世界だと人族、獣人族、妖精族など、大まかに分けるとこんな感じ。エルフに転生してたかも知れないんだって。胸熱じゃん……
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