第4話 田舎の猫 女神に遭う

 その扉の向こうには何もなかった。正確に言えば、何も見えなかったんだ。真っ白な光に溢れ、ひたすらに真っ白な世界が続いていた。夜目が効くということは、光を過度に感じるということで、私は一時的に視力を失っていたんだよ。


  ようやく目が慣れてくると、目の前に誰かがいるのに気がついたわ。その人は豪華な椅子に座り、こちらを興味深そうに見ていたのよね。 


 「ようこそ、あなたが虹乃音子さん?」

 その女性は透き通った優しい声で、私に話しかけた。

 「ええっと……あなたは?」 

 「そうね、人に何かを尋ねる時は自分からというのがセオリーよね。私はキャティ、貴女たち猫人の守護を司る神のようなもの……かしらね?」


 よく見ると、その女性の背後には白い翼があって……いかにも女神様って感じではあるんだけど、私の中に少しの違和感が生じた。

  (キャティ……? アンドロイド……?) 私の頭の中に、今までは存在しなかったはずの記憶が甦る。

 「アンドロイドではないわよ?」

 即座に否定してくる女神様。ナチュラルに人の思考を読むとは、さすが女神様よね。

 

 これ以上話を掘り下げるのは、なんだか危険な気がしたので、私は答えた。

 「はい、私は確かに虹乃音子ですけど、どうしてご存じなんですか?」 

 すると、女神様はゆっくり話し始めた。

 「今、貴女の中で記憶の再生が行われてるはずなんだけど、自覚症状はないかしら?」

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