第3話 田舎の猫 穴に落ちる

 「と、とにかく街道に戻らなきゃ……」 

 気持ちは焦るんだけど、方法が見つからない。なんせ、朝起きたら知らない草原だったのよ。昨日まで歩いてきた街道が、どこにもないの。女神様が現れて、アナタは異世界転移しましたと言われたら、思わず信じちゃうレベルだ。


  「こ、こっちかな?」

 勘を頼りにがむしゃらに進むと、急に足下の地面が沈んだ。


  「お、落ちる~っ!」

 草に隠れされて地面に穴が空いてるのに気づかなかったのだ。私は一気に穴の奥底へ飲み込まれていった。


  「いっつつ……」

 見事穴の底にお尻から着地した私は、痛みをこらえて立ち上がった。距離にして5メートルくらい落ちたようだ。このくらいの高さからなら落ちても猫人は全然平気。お尻から落ちたのは、暗くて底が見えなかったからなんだよ、ホントだよ。


 取りあえず地面を感じて落ち着きを取り戻した私は、周りの様子をうかがった。こういう時、夜目が効く猫は便利よね。


  「ただの穴じゃないみたい……」 

 そう、壁がなんかツルツルしていて、人工的な感じがするのよ。こういう造りに関して、私には思い当たる節があった。


 「遺跡なの……?」

 何故そう思ったかというと、グリーンフィールドにも古い遺跡があったの。そして、その遺跡に幼馴染みたちと潜ったことがあったわけ。


 「取りあえず進むしかないか……」

 周りの壁はツルツルしていてとっかかりもないし、5メートルをジャンプして昇るのは無理だ。幸い、すぐ傍に遺跡の入り口らしき扉がある。開けたらお化けと遭遇する可能性もあるけど、いつまでもここにいる訳にはいかないしね。


 戻れないなら進むしかない。そう考えて私は扉を開けた……

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