ノーパン【だ】から始まった恋

第9話 女子テニス部編1

　あたし『牧野美紅』は、中学時代は名門女子テニス部のキャプテンだった。

　だからテニスの腕前はもちろんそれなりにあると自負していたし、明るく周囲を引っ張る性格だし、それなりにルックスも良くて、ハッキリ言ってしまうと人気はあったと自分でも思う。

　そんなあたしが、高校に入ってもテニス部に所属するのは当然だけど、当然じゃない事もあった。

　それは名門の付属の高校に進学せずに、この決して、強くて有名じゃない高校を選んだ理由でもあったりする。

――中学三年生の夏。

　あたしは恋に落ちた。

　あの時は、まだそんな感覚はなかったけど、きっとあの時から、あの試合を観ていた時から恋していたんだと思う。

――インターハイ予選。

　場所は付属の高校。

　その女子中学校に通う女子テニス部員だったあたしは、高校生の男子の試合のボールガールをしていた。

　あたしの通う付属の中学校は、男女とも強豪で全国が目標って云うか、地区予選で負ければその年は不作だったと言われるくらい。

　もちろん中学校ではそこまでキツクなかったけど、高校は全国に行くことが目標ではなく、全国でどこまで勝てるかだった。

　私は、早々と予選で負けてしまって、高校生の先輩たちにも色々と言われて、落ち込んでいた時でもあったし、高校になったら！って、見返してやりたい反骨心とが半々な時でもあった。

　あたしがボールガールを務めた試合は、男子テニス部の３年生の全国でも有名な付属の高校の先輩と、無名の高校の１年生の地区予選３回戦。

　体格も知名度も天と地ほど違う二人の試合。

　誰も興味のなかった試合だったと思う。

　先輩相手に何ゲームではなく、何ポイント取れるのかなって、みんな思っていたと思うし、あたしも、そう思っていた。

　そもそも、観るまでも無い試合だったとさえ思っていたと思う。

　試合が始まるまでは……。

　でも、いざ試合が始まると、小柄でまだ身体ができていない、無名高校の1年生の男子が、同じフォームでバックハンドから繰り出されるドロップショットとトップスピンロブと云うある意味、真逆のショットを武器に、先輩のパワーショットに対抗して互角の戦いなった。

　あたしは、先輩には申し訳ないけど、１年生の男子を心の中で応援していた。

　トーナメント表には高校名と学年、そして名前が書いてあって、それを確認すると

先輩と真っ向から挑み互角の試合をしている１年生の男子の名前は『遠藤翔』とあった。