第5話 狂気の風生会 その1
「起きて柊介、もう帰りの会だよ」
「んあ、あぁ水月…じゃなくて葵」
午後の授業についてだが、俺は爆睡していた。インプットした内容はゼロに等しいが、かろうじて覚えているのは〜初代中国皇帝に成り上がった俺、不老不死を求めてのんびりスローライフを送ります〜とかなんとかだったか。
「始皇帝にそんな紹介のされ方してないよ!?」
ピンポンパンポン。
学校に備え付けられたスピーカーが声高らかに歌い上げる。これから帰るってのになんだ?
「なんだろうね?」
スピーカーからは女声が聞こえてきた。
『みんなこんにちは、会長の黒間エドナよ。』
すると、放送を聞いていた女子たちが大興奮して「エドナ様ー!きゃー!」とか、「エドナ!エドナ!エドナ!」とかコールが始まり、その大人気っぷりを俺に見せつけやがった。そういうの転校生の俺にやってくれよ。大歓迎だから。
『呼び出しよ。2年3組、榎浪柊介は放課後風生会第二会議室まで来るように。繰り返す、2年3組…。』
風生会?そういやどっかで…あぁ!あの忌まわしき雨井の!
「なんで!なんでなんで!」
葵は気が気でないように俺の机の端を行ったり来たりしている。
「目をつけられちゃった!柊介が!終わりだ!柊介が終介になっちゃう!」
ならんわ。
雨井になんの用か聞くか…と思って雨井の席を見て見たがもう既にいない。
「あわわわわ」
「まぁ落ち着けよ、俺が奴らにガツンと言ってくる。結構頭にきてたんだ。」
「絶対やめて!終介じゃ勝てないよ!風生会はやばいんだって。ぶっちゃけ雨井さんは風生会の中でも穏健派な方なんだよ。あれで。…チョン切られたりしないよね?アーメンアーメン…」
…チョン切るとかは流石にないだろ?
風生会第二会議室の場所を葵に教えて貰い、俺は武者震いの止まらない足で『風生第二』と書かれた部屋の前に辿り着いた。
葵はビビり散らかしていたが、まあ対した用ではないだろう。きっと、多分。
そう思いドアノブに手をかけた瞬間、俺は黒い布を被せられ手に手錠をかけられた。
「!?」
誰だ!テロリストか!?俺は授業中にお前らが襲ってくることを想定して痛い痛い痛い痛い優しく扱ってくれよ、俺人質なんだろ!?
俺は椅子に座らせられた。黒い布を外されると、女子が3人立っていた。その中にドヤ顔をした雨井がいる。そしてもう1人俺を拘束した女が後ろに立っている。
「な、なんの真似だ」
「あんたが榎浪ね」
真ん中に腕を組んで仁王立ちしている漆黒のツインテールをした女は言う。あどけない顔に自信の籠った目をしている美少女だ。
「私は2年1組のエドナ、
「私は1年の
そう言い放つのは赤い軍服のようなものを着ているショートカットの美少女。というか、ここには美少女とイケメンしかいない。違う葵の事じゃない、俺だよ。葵はここにはいない。…なんだその目は。おい。
「ふぅ…演技するのも大変だったんでした。ぱおん。危うく風生会の人間であることが幾度もバレかけましたが、私の優秀な頭脳で回避することが出来ました。ひひん」
と雨井。全然隠しきれてないのを言うべきか否か迷っていると、俺に手錠かけたと思える後ろの黒髪ロングが話す。こっちは黒い軍服っぽいのを着ている。真後ろにいるのでいい匂いが嗅ぎ取れる美少女。
「私は2年2組の
「姉様かっこよすぎますぜ。Урааа!」
「ちょっとみんな、私が言ったとおりに言うって約束したよね!?」
「馬の耳に念仏ですね、え、ちょっと待って下さい!これって馬のこと馬鹿にしていませんか!あ、待って!馬鹿も馬と鹿をバカにしています!誰ですか、考えたの!何も考えず使っちゃったじゃありませんか!」
「羊ちゃん分かったからちょっと黙って、グダグダになっちゃう!」
俺は何を見せられてんだ
「ゴホン、それでね、あんたが私たちの学校を侮辱した罪を償ってもらうわけだけど」
「俺が一体いつこの学校をクソだと言ったよ?証拠あんのか?推定無罪って知ってるか?」
するとエドナと言っていたやつは、待ってましたと言わんばかりの顔になって、レコーダーのスイッチを入れる。
『MAZIDEこの学校終わってるよな』
!? これは俺が中庭で葵と喋っていた時のセリフ!
「ククク、そうよ?はい、これが動かぬ証拠」
俺を売ったのか?葵が…?
「あ、そういう訳じゃなくて袖に」
袖?
エドナは俺にの後ろに手を回して袖から黒い何かを取る。な、なんのつもりだ。
「よし、取れた。はい、これね盗聴器。全部聞いてたの。」
「は?」
「先輩、甘えですぜ?私たちを批判する人間はシベリア送りにしなきゃ行けねぇですぜ。だから言論の管理は必要でっせ。デェェェェン!」
クソ、いつの間にこんな盗聴器を…あ!
俺は思い出す。一体こんな盗聴器がどこで付けられていたのかを。
「転校生さんとは仲良くしたいんです。だめ、ですか?」
袖を掴む雨井。
「雨井てめぇ!男心を!てめぇ!」
「ククク、鼻の下伸ばしてその気になっている転校生さんの姿、お笑いでしたよ。うきー」
さっきからその語尾なんなんだよ…。うきーやめて、すげぇうざいぜ。
「さて、懲罰の内容だけど…どうしようかしら?」
「言っとくが、俺は受けないからな。たとえどんなに酷い目にあっても俺は抗い続けてみせる。」
「私を差し置いてかっこいいこと言わない!」
後ろからパチン、と叩かれる。は?
「へぇー?威勢はいいのね?でもこれを聞いても同じこと言えるのかしら?羊ちゃん教えてあげて」
「はい、やめておいた方がいいです。にゃー。今日はいませんが、風生会にはもう1人理事長の娘がいます。かあ、かあ。その子がパパにお願いすればあなたはこの学校を否が応でも去ることになります。くわっくわっ」
俺はここいらでちょっと我慢できなくてなってきた。
「そんな独裁許されるわけないだろ?別に転校してやってもいいさ、でもな、お前らには、必ず報いてやる。あんまり人を舐めんなよ?」
「先輩、ほんとに大丈夫でありゃしょうか?お友達のことお忘れになっちまってませんか?…見る見るうちに苦悶の表情になっとりますね、気持ちはわかりますぜ。」
クソッ!こいつらほんとに…!
「はぁ、わかったよ、なにすればいいの」
俺が全てを諦めてそう返した瞬間、思いっきりドアが開く。全員がドアの方へ顔を向ける。
そこに立っていたのは消化器を持った葵だった。
「友達を助けにきたよ!柊介!」
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