第4話 水月の悲しみ
「MAZIDEこの学校終わってるよな」
昼飯を食い、「風生会」の用事があるとかなんとか言ってた雨井と別れて俺たちは中庭を散歩していた。ムカつくことに中庭も広い。もうなんかちょっとした植物園みたいになってる。この学校、いらない所まで広いので散歩にうってつけなのである。
「気持ちはわかるけど、せっかく入ったんだから楽しめるところを楽しもうよ?学費タダなんでしょ?」
諸君には説明不要だと思うが、なぜ散歩しているかと言うと俺が教室に戻りずらいので昼休みの時間を潰すためである。
「でもなー…あ、そうそう、そういや水月はなんでこの学校に入ったんだ?」
暇なのでこの機に友人のことを色々知るのも悪くないだろう。水月は答えづらそうな顔をして話し始める。
「ちょっとアレな話なんだけどね、僕のお母さんの家系は代々地主やってるんだけど、土地は女子に継がせる決まりがあるんだ。」
通りで金持ちなわけだ。
「でもね、なかなか女子が産まれなくて、もうお母さんも歳とってきちゃったから、兄弟の中で1番女々しいで僕に継がせることにしたらしいんだよ。僕は嫌だって言ったんだけど」
「…クフw」
「ちょ!何笑ってんの!?今結構大事な話してたよね!?僕の暗い過去明らかになってたよね!?あーあー女々しくて悪かったね!?でもね、僕が女々しくなかったら榎浪くん、ぼっちだったんだからね!僕の女々しさに感謝してよ!」
「ありがとう女々しい水月」
顔を真っ赤にして怒っているが、たしかにパッと出して女の子ですと言われても違和感のない可愛げがある。俺もこんな顔に生まれていれば、もっと違ったライフスタイルが送れていたのだろう。忌々しい。
「たしかに榎浪くんはどっちかって言うと男らしい顔だもんね、でも結構凛々しくてかっこいいと思うよ?」
俺の話はいいから、続きを聞かせて。慰めは惨めになるの。
「別に慰めたわけじゃないけど…はいはい、えっとそれで、できるだけ女の子に寄せたいからってこの学校に入れって言われてさ、で兄弟の中で誰かが継がなきゃいけなくて、しょうがないから僕が入学したんだよ。1年の頃は地獄で、僕一人しか男子がいなかったから女子たちに遊ばれてさ、女性服着させられたり、髪伸ばしたままにさせられたりして…あ、涙が、ごめんちょっと後ろ向いて貰える?」
俺が後ろを向くとすすり泣く声が聞こえてくる。さぞ辛かったんだろう。
「辛かったんだな…」
俺が優しくそう言いかけると、水月は溢れていたものが一気に溢れ出すように泣き出した。
「だがら"でんごう"ずる"な"んでい"わ"な"いで」
「お、お、落ち着けよ?分かった!分かったから!苦しかったろう!?大丈夫、傍にいるから!な?」
「え"な"み"ぐん"〜ぅ、う」
思ったよりやばかったわ。
「やぐそぐだがらね、ぜっだいだがらね」
その後、水月に「名前で呼んで欲しい」と言われたので
PS.後日談だが、この事から俺たちがデキていると思い込む腐女子どもが騒ぎ立てるので俺たちの居場所はもっとないなった。俺も泣いていいか?
なんで俺の青春ヒロインたちの思想だけこんなに強いの 戸惑郎 @toyasama
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