第1話 よそ者は最初そういう扱いを受けがち
デカすぎんだろ…。
俺は転校先である、私立紫百合学園の門の前に立ち、その壮観に驚いた。
さすがは県内トップの元お嬢様校。その辺のタージ・マハルくらいでかい校舎には気品が漂い、校名に恥じぬ花の香りと、年頃の女の子の香りとが入り交じって鼻を通り抜ける。改めて我が父親の偉大さと誇り高き行いに深く敬意を表した。
俺は宮殿のような内装をした校内に入り、広すぎて蜘蛛の巣のようになっている案内図を見て職員室へと向かう。カーペットの引かれた廊下には、掲示板があり、そこには色んな部活や委員会の張り紙がある。
すると、俺はその中に妙なものを見つけた。
ん?何だこのポスター?
「オスガキは敵だ
オスガキ…?雄の牡蠣?
「欲しがりません食肉は 風生会」
…食肉を欲しがらないってなんだ?
なんか食中毒事件でもあったのか?と無理くり説明をつけてみるが納得は無い。
俺は怪訝に思ったものの、浮かれた気分だったのもあり、「まぁ、ええやろ」の精神で特段気にせずに通り過ぎて職員室をノックした。
今思えば俺はここで引き返すべきだったのだ。俺は「異変」を見逃した。
「では、転校生。入ってきて。」
ドアを開ける。すごい、一面女子。しかも顔面のレベルがとんでもなく高い。ほんとに来たんだな。おっと、俺がこの学園に、じゃないぞ?来たのは俺の「春」だ…。
「こんにちは、
ちなみにダーツはどれがどうなって点が入るのかもよく知らないし、哲学は全く意味の無い学問だと思っている。すまんな、ソクラテス。
「はい拍手。」
ぱち…ぱち…。
てっきり、きゃ〜!とか、そういう反応をほんのちょっと期待していたのだが、歓迎の拍手すらほとんどなく、教室はテンションの低い囁き声でザワザワした。
「オスガキかよ」
「とっても萎えた」
なんか、あんまり歓迎されてないみたいだが、まぁ気のせいということにしておこう。…よそ者は最初そういう扱いを受けがちなんだ。
「じゃあ席は〜、水月の隣でいいか。隣が男子の方が榎浪もやりやすいだろ?」
「あ、初めまして、僕は
よろしく、頼むから哲学とダーツに関しての質問だけはやめてくれ。
「うん、よろしく。じゃあそうだね、今日のお昼に僕が学校を案内するよ。」
そう柔和に微笑みかけるのはかなりの茶髪でとても中性的な美少年。ショタ系とでも言うのだろうか、親しみやすく優しそうな印象を受ける。そして特筆すべきは周りの女子の見る目が明らかに俺のものとは違う点である。
やはり、全ては顔ということらしいな。
まぁしかし、話せる男が1人いることを幸せに思うべきなのかもしれない。
転校早々に多少出鼻をくじかれた俺は、この学園生活に若干の心配を感じながらも、水月に教科書を見せてもらって午前の授業を受けた。
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