ポルノ依存症克服マニュアル

対策編

７，ポルノ依存症の克服に向けて

　本稿第２章から第６章にかけて、我々はポルノ依存症を定義し、またポルノ依存症の脳科学的機序について見てきました。ここまでの本稿は謂わば理論編で、本章からは具体的なポルノ依存症克服のための対策に関して述べていきたいと思います。しかし、その前に、二つほどお話しておかなければならないことがあります。一つは、ポルノ断ちで発生するであろう禁断（離脱）症状、そして一つは、決してポルノ依存症の克服を諦めてはいけない、ということについてです。

　では、ポルノ依存症の禁断症状から述べていきますが、これにはポルノ依存症の周辺症状と同様、様々なものがあります。一先ず、筆者が把握している限りの症状を以下に挙げてみましょう。

・身体的な痛み

・頭痛

・めまい

・吐き気

・気分の激しい起伏

・無気力

・憂鬱

・無能力感

・不眠症

・不安

・ブレインフォグ

・激しいポルノへの渇望

・頻尿

・非歯原性歯痛（歯が原因ではない歯の痛み）

・過食

・自殺念慮

・抑うつ

・嗜眠傾向

・悪寒

・フラットライン（一時的な勃起不全と激しい性欲喪失）

・インフルエンザ様の症状

いやはや、実に症状が多く、これらがポルノ依存症の克服に際して現れるとなると、全く気が滅入る思いです。

　筆者も複数回のポルノ断ちの中で、この内、頭痛、めまい、無気力、不眠症、頻尿、市民傾向、憂鬱、フラットラインは経験しました。特に酷かったのが、頻尿と不眠症です。頻尿は筆者の場合だとポルノ断ち三日目に現れ、これが一日中継続しました。一時間に三回はトイレに駆け込んだと思います。筆者の腎機能に異常は今まで認められていないため、これは正しくポルノ依存症の禁断症状であると言って良いでしょう。また、不眠症に関してですが、これは一週間程続きました。その時の平均睡眠時刻は夜中の三時です。当然、日中に激しい睡魔に襲われました。この様に、ポルノ断ちの禁断症状は、非常に激しく出る場合があります。ポルノ断ちを行う際には注意されてください。しかし、ポルノ断ちを続けていく中で、もしそれが禁断症状であれば、確実に消失するか改善します。ですから、禁断症状が出たからといって、ポルノ断ちを止めてポルノ依存症の悪循環に舞い戻るのは、お勧めしません。仮に禁断症状が長期間継続した場合は、何かポルノ依存症状とは別の疾患を抱えている可能性が生じるため、その時には医師の診察を受けるべきでしょう。

　さて、ここで一つ、説明を加えておかねばならないのは、フラットラインというポルノ断ち特有の禁断症状です。フラットラインとは、ポルノ断ち中に起こる一過性のED、低性欲、低活力状態のことを指します。複数の報告によると、ポルノ断ち二週目から始まることが多く、回復には数週間から数ヶ月、或いは数年を要するケースもある様です。人によってあることもあれば、無いこともあります。けれども、このフラットラインが発現した場合、これは大変に厳しいものであるということをここに述べておきます。

　上記した通り、筆者もフラットラインに一度だけなりました。筆者の場合、他の報告例とは違い、ポルノ断ち七日目にこれが発生し、その際には、極端な低活力状態で、性欲も無く、それまで存在した朝勃ちも無くなり、陰茎も縮み込んで非常に小さく、兎も角元気がありませんでした。けれども、奇妙なことに、ポルノ（この時は新刊の官能小説）に関する渇望だけは低活力状態にもかかわらず激しく存在し、フラットラインから一週間後、結局ポルノへの渇望に負けることとなりました。なお、フラットライン中には、極度の憂鬱も生じてきます。自分が自動的に自分を否定して痛め付けるのを感じた時には、本当に恐ろしい思いがしました。これ程、激しく、そしてキツい禁断症状があるということを、読者の皆様は是非知っておいてください。知っておくことによって、多少はそれから受ける影響も軽減するでしょうから。或いは、フラットラインとは、今までポルノを駆使して無理矢理興奮させ続けてきた体に対する休養期間であるとする見方もあります。フラットライン中は休養期間と思い、諦めてゆっくりと養生されるのが良いかも知れません。フラットラインも、ある程度の期間を経た後、回復します。気長にかつ気楽に終わるのを待つのが、重要です。

　それでは、本章で述べることの二つ目、ポルノ依存症の克服を決して諦めてはならない、ということについて述べていきます。はっきりとここに記しますが、ポルノ依存症の克服は極めて困難なものです。ある報告例ではアルコールや大麻等よりもやめるのが難しかったという記述があるように、本当にこれは難しい。恐らく最初の内は、一日と持たないでしょう。筆者の場合ですが、ポルノ断ちを思い立った一時間後に既にポルノを視聴していました。それ程までに、このポルノという現代のデジタルドラッグの依存性は強力なものです。最も、本稿をここまでお読みいただいている読者であれば、そのことについては身を以てご存知のことでしょうが。ポルノ断ちを始めると、すぐにポルノの視聴を再開してしまい、ポルノ断ち自体が非常に難しいことから諦めることを決心してしまうことがあるかと思います。しかし、そこで諦めないでください。

　最初はポルノを止められたのが一時間であっても、ポルノ断ちの試行を重ねる毎に、その期間は段々と延びていきます。また、脳もそれに応じて変化していき、段々とポルノへの渇望は減少していき、ポルノ断ちを継続するのも段々と苦ではなくなっていきます。ですから、何回ポルノ断ちに失敗しても、何回ポルノ断ちを諦めようと思っても、決して諦めずに継続してください。

　ポルノを見てしまった。

　それでも良いではありませんか！

　貴方はポルノを見てしまっただけです。別に、何の罪も犯した訳ではない。もう一度、ポルノ断ちを始めれば良いだけのことだ。

　たとえポルノ視聴をポルノ断ち中にしてしまったとしても、そこでポルノ断ちを諦めなければ、それは前進です。ポルノ依存症の克服を諦めることが、我々にとっての停止であり、失敗なのです。

　どうか、ポルノ依存症の克服にあたってはこのことを、心に留めておいてください。