6,ポルノ依存症と脳―②では、ポルノ依存症を克服するためには?
本章まで引き続き、ポルノ依存症と脳の関係について見ていきます。前章ではポルノ依存症を発症する仕組みを脳科学的に概観したのですが、本章ではその中で何度も登場した扁桃体という脳の部位に、まずは焦点を当ててみましょう。
扁桃体とは、大脳辺縁系に属する脳の一部分であり、アーモンドの様な形をしています。これは前章でも述べた様に、報酬系にも、ストレス系にも属しているものでした。この様に依存症形成に関する重要な二つの神経系に属することからも容易に見て取れる様に、依存症の克服にとってこの部位は非常に重要なものであると言えます。
では、具体的に扁桃体がどの様な働きを有しているかと言いますと、一つには、前章で述べた様に、眼窩前頭皮質と共に刺激と報酬とを結びつける、所謂、報酬の学習という働きがありました。また、これに加えてこの部位は、ある状況からの刺激に対して即座にドーパミンやノルアドレナリン等のホルモンを放出する信号を発するという役目もあります。即ち、扁桃体はいち早く状況に反応して脳の報酬系やストレス系を活性化させるという働きも有しているのです。まとめますと、扁桃体は、刺激と報酬を結びつけ学習する働き、刺激に対していち早く反応する働きという二つの役目を持った脳の部位である、ということになります。如何にも、この扁桃体に対するアプローチが、ポルノ依存症克服につながりそうな気がしないでしょうか。
そんな扁桃体ですが、これが外界からの刺激によって活性化されますと、脳が衝動的で柔軟さに欠ける行動パターンに、つまり「自動操縦モード」になってしまいます。ポルノ依存症を例に取ってみれば、ポルノ視聴を誘発する何らかのトリガー(例えばグラドルの水着写真やストレス)の刺激が与えられた場合、扁桃体が即座に活性化され、ドーパミンやノルアドレナリンといった各種ホルモンの分泌を促します。すると、脳の報酬系が活性化され、衝動的にポルノ視聴に対する渇望が生じ、早速、半無意識的にスマートフォンで18禁サイトを開いてしまう。以上の、一連の先行刺激からポルノ視聴までの半無意識的な流れが、自動操縦モードです。つまり、我々にとって問題となっている衝動的なポルノ視聴は、この扁桃体の活性化から生じている、ということが言えるかと思います。
また、この自動操縦モードですが、これを止めようとしても、執行統制を司る前頭前野は既に機能不全の状態にあるので、どうにも止められません。そして、その衝動的なポルノ視聴がもたらした快楽という報酬に基づいて、扁桃体はポルノ視聴と脳内の報酬とを結びつけ、さらなる強化学習を行います。正に、これこそがポルノ依存症の悪循環の仕組みです。
したがいまして、この扁桃体を如何に制するか、ということがポルノ依存症克服のための鍵となる、ということが言えるでしょう。何にせよ、衝動の形成から報酬の学習まで、その全てを取り仕切っているのが扁桃体ですから、この脳の部位を何とかしなければ話になりません。また、もしも外界からの刺激によって扁桃体が感作されたとしても、その衝動を抑制するために、前頭前野を再び機能するようにもしなければなりません。
よって、脳科学的にポルノ依存症の克服のためには、以下のことが重要であると、筆者は考えます。
①刺激に対する扁桃体の活性化の抑制
②扁桃体による報酬学習の解除
③執行統制を司る前頭前野の強化
この三つのことが同時に行える方法こそポルノ依存症克服のための手段としましては、至上のものである、ということが述べられるでしょう。とはいえ②の扁桃体による学習に関しましては、この学習回路が消えるまでに最短で二ヶ月程度かかるということですから、時間による解決を待つ他は無いのかも知れません。とすると、①と③の効果を有する対策が、最もポルノ依存症克服には有用であると言えます。
しかし、果たして、そんな都合の良い対策法が、存在するものでしょうか?
あります。これについては後の章で記述するので、ご期待ください。
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