4,ポルノ依存症の症状

 ポルノ依存症の定義が確定した所で、次はその症状について見ていきます。依存症といえば、やめたいのにやめられないのだけが症状であると思いがちですが、筆者の見た所によれば、どうやらポルノ依存症には、ポルノへの依存症状以外にも、心身に現れる症状があるようです。しかし、これらの症状は何れも自分をポルノ依存症だと認定した我々の偉大な先達が報告したものであるので、一概にポルノ依存症が原因であるとは言い難いものも含まれている様に思われます。このため、ポルノ依存症の、ポルノへの依存症状としての症状を中核症状、依存症状以外の心身に現れた症状を周辺症状として分類します。もう一度述べますが、周辺症状はあくまでも報告によるものであり、本当にそれがポルノ依存症が原因かは不明であるということには十分ご留意ください。ですが、この様な不確定な事項であっても、周辺症状はここに掲載する意味があります。これに関しては後述しますので、そちらをご覧ください。

 では、中核症状から。一般的な依存症状の定義ですが、やめたいのにやめられない、というのと、既に患者に悪影響が生じているにもかかわらず、やめることが出来ない、というのがあります。したがって、これをポルノ依存症に適用しまして、ポルノ依存症の中核症状は、

・ポルノ視聴を、不利益や悪影響が生じているにもかかわらず、やめたくてもやめられない

というものであるとします。

 次に、周辺症状ですが、これが全く実に多彩であります。余りの豊富さに、困惑し苦笑を浮かべてしまうほどです。一つずつ下に挙げていきますが。

・報酬先送り能力の低下(やらなきゃいけないことを後回しにしてやれない)

・膣内射精障害

・ポルノ起因勃起不全(PIEDと呼ばれる)

・性欲の減退

・早漏

・遅漏

・ポルノのジャンルのエスカレート(例えば、JKものから満足できなくなってニューハーフものへ、といった嗜好のエスカレート)

・現実の異性の魅力が減退

・社会不安障害

・自尊心やセルフイメージの低下

・鬱

・活力の低下

・集中力の低下

・ブレインフォグ(思考力の低下)

など、上記の症状以外にも様々な症状があるようです。無論、これらは周辺症状ですから、ポルノ依存症であるからといって必ずしもこれらの症状の全てが起こる訳ではありません。また、これら全ての症状が起こらず、中核症状のみがある場合も考えられます。その場合は、別に問題は無いのですが、真に問題であるのは、中核症状を自覚しないで、周辺症状の何れかの症状を自覚している場合です。

 依存症は否認の病であると、よく巷では言われています。つまり、依存症の人間は、依存症の状態にありながらも、それでも自分はまだ大丈夫と(無理矢理)思い込み、依存症であることを否認してしまうのです。しかし、脳は正直なもので、周辺症状の何れかを起こし、我々に危険な依存状態であることを伝えるのですが、当の我々は、そのサインを無視してズルズルと更に深い依存状態へとのめり込んで行ってしまう。そして周辺症状も酷くなり、さらにまた……という風に依存症の悪循環が生まれてしまうのです。筆者もその悪しきスパイラルに囚われた経験があります。最初は、たとえ平日に2~3回、休日に6~7回ポルノを用いた自慰をしていたとしても、気持ちが良いだけで私は依存症ではない、ポルノと上手くやれていると思い込んでいました。しかし、日増しに頭の回転が悪くなり、集中力が低下していく……寝不足のせいかと思いエナジードリンクを飲んで頑張ろうとしますが、集中も思考も低下していく……本当の原因は、ポルノを用いた自慰に対する依存症であるにもかかわらず、それを別の原因だと皮相な思考で転嫁して、過剰なポルノ視聴という原因が解決されないまま慌てふためく、なんと滑稽で、なんと愚かなことではないでしょうか。

 筆者が周辺症状が不確定でありながらも記述したのには、ここに理由があります。依存症は、もう一度述べますが、否認の病です。我々は、誰をも自分を依存症患者だとは思いたくない。だから、ポルノ断ちを男磨きの一環だとかモテのためだとかいってやり始めるのです。本当は、自分には他に何も無い、ただのポルノ依存症患者であるということに、目を向けたくないから。これも立派な否認の一形態でしょう。けれども、上に挙げた周辺症状の何れかに当てはまり、かつポルノ視聴を行っていた場合、一度は自分がポルノ依存症である可能性を疑ってみるべきです。周辺症状とは他でもない。ポルノ依存症をいち早く、それほど進行していない段階で検出するための指標なのです。

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