理論編

2,ポルノ依存症克服のための最も重要な心構え

 イントロダクションを終えた所で、ここから本稿における本論が始まるのですが、その前に、読者の皆様に、章題ともなっているポルノ依存症を克服する際に最も重要な心構えをお伝えしておきたいと思います。それは、

「我々はポルノ依存症患者であり、即ち病人であるのだから、ポルノ依存症の克服に対して、その治癒以外には何も期待しないし望まない」

ということです。

 ポルノ依存症の克服のために、ポルノ依存症の克服以外は望まない――一見すれば奇妙とも思える命題ですが、しっかりと意味はあります。

 現状、特にインターネットでは、ポルノ依存症の克服は、ポルノ依存症の克服を目的として行われるのではなく、何か別の目的の一環として行われていることが多いです。例えばその一つとして挙げられるのは、女性にモテる様な男になるべくポルノ依存症を克服する、といったこと。或いは、男磨きの一環としてポルノ依存症を克服するだとか、そういったものもある。または、ナンパで女をGETする一環としてポルノ禁するぜ!といった様な言説も。これらの言説を決して否定する訳ではありません。高齢のがん患者が見舞いに来る孫の笑顔を明日への希望として生き長らえる様に、何らかの治療に対するモチベーションがあった方が良いことはあるでしょう。けれども、ポルノ依存症の克服という観点からすると、このモチベーションは時に命取りになりかねません。

 後の章で説明しますが、ポルノ依存症にとっての大敵は「ストレス」です。何らかのストレスがあると、ポルノ依存症を克服できない可能性がグンと高まります。そういう風に、多年に亘りポルノに脳を訓練されてしまっているのです。そのため、ポルノ断ちの際には出来る限りストレスを減らさねばならない。しかし、上の様に女性からのモテや男磨きといったことをポルノ依存症克服の動機として据えていると、これらの事柄を達成出来ないという苛立ちや不安といったことから、望まないストレスが生まれ、自分をポルノ依存症の悪循環に追い込みかねないのです。ですから、上記の心構え――我々はポルノ依存症患者であり、即ち病人であるのだから、ポルノ依存症の克服に対して、その治癒以外は何も期待しないし望まない――だけは、しっかりと心に留めおかなければいけません。そうせずに、モテや自己改善といった、ある意味ポルノ依存症克服にとって不要で副次的な効果を目的とすると、必ず、「必ず」、必ず!、ポルノ依存症は再発します。これまで複数回、筆者はこういった不埒な思いからポルノ依存症克服を実行し、そして幾度も敗走しました。どうか、本稿をお読みになっている読者の貴方は、まずポルノ依存症克服以外は特に何も期待せず、ポルノ依存症の治療に臨んでほしいです。

 そもそも、ポルノ依存症を克服すること自体が、遥かに困難で想像以上に一大事なのです。それこそ、女性からモテることや、或いは自分磨きよりも、ポルノ依存症患者にとってのポルノ断ちは大変であります。それに男磨きもナンパの訓練も、この依存症が治癒してから行っても決して遅くはないでしょう。ポルノ依存症を克服することによって、多くのYour Brain on Pornの報告例では高い活力と余りある時間を手に入れています。ポルノ依存症が治り次第、それらを自分の目的に当てれば良いのです。今は、暫し、雌伏の時と思い、どうか、治療に専念してください。

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