本編②-8

ねぇ、聴いて。

これは、俺と愛しいあいつの物語。



何度目かのキスだった。

でも俺にとっては、忘れられないキスだった。


あれから、今まで以上にあいつのことが頭から離れない。

誰とセックスしても、誰とキスをしても。

これがあいつならいいのに。という考えが浮かんでは自己嫌悪に陥っていく日々。


それなのに、どうして?


「何してんの。」


お前は、また俺の前に現れる。


東京の大学に合格したんだと、母さんから聞いた。もう、一生会うことはないと思っていたのに。


「咲也...。」


実はこの間も気になっていた。

やっぱり、もう俺はかっこいいお兄ちゃんではないんだよな。


久しぶりに会ったあいつはキスした時と同じをしていた。あの、熱情が篭った瞳を。


まずい。


「おれ、ずっとあんたのことが!」


「言うな!!」


俺はあいつの言葉を遮った。

本当は、その言葉を、俺はずっと.....


「お前は勘違いしてるんだ。」


俺を期待させないでくれ。

お前は一時の感情に乗せられてるだけなんだ。


「俺、明日にはもう東京に行くんだ。これで最後にするから!」


知ってる。もう、お前とは会えないから。

最後だから…


「あんたを俺のものにしたい。」


どうして...?

どうして、お前はいつも、

俺が大切にしまっていたこの感情を、

いとも容易く引きずりだすんだ。


「入れよ。」


一時いっときの気の迷いは俺のほうだった。

どうせもう最後なら、

俺の思いが報われるなんてこと、

1回くらいあってもいいんじゃないだろうか。

そう、思ってしまったんだ。

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