本編②-9

ねぇ、聴いて。

これは、俺と初恋だった人の物語。



こうやって、相手のシャツのボタンを外すのは何度目だろうか。

こうやって、相手の熱を求めてチャックを下ろすのは何度目だろうか。


パンツの上からでもわかるほどあいつの昂りは存在を主張していた。


はやくお前の熱が欲しい。


俺はあいつの昂りに舌を這わせた。

あぁ感じる。こんなに期待を膨らませて、

いまにもはち切れそうになっている。


俺は、あいつの上に跨って、

その男根を受け入れた。


俺が上下に腰を揺らす度に

あいつの身体に熱が篭もっていく。


本当はずっと

お前とこうなりたいと思ってたんだ。


快楽で脳が麻痺しそうだ。

無我夢中で腰を振っていると、

いきなり後ろに押し倒された。


咄嗟の驚きで、理性が戻ってくる。


けれど反対にあいつはもう理性がなってない顔をしていた。

強く腰を打ち付けてくるこの雄を、俺は離したくない。でもね、


「咲也っ.....好っ、」


その言葉はダメなんだ。

お前がもう、普通に戻れなくなっちゃう。


俺は言葉を遮るようにキスをした。

一生忘れることのないキスを。


噛み合ってはいけない双方の思い。

俺はお前に、こっち側に来て欲しくないんだ。


俺のキスがもどかしかったようで、

あいつは俺のうなじを強く噛んだ。

きっと血が滲むほどの強さで。


「痛っ...。」


あぁ。この傷が、一生消えなければいいのに。

忘れたくないこの思い出を、身体に刻んでしまえればいいのに。


ほとぼりが冷めるまで、

あいつは俺の身体に痕を残し続けた。


でもきっと、いくら望んでも、

この痕はいつか消えてしまうんだろう。

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