本編②-7

ねぇ、聴いて。

これは、俺と愛しいあいつの物語。



「何すんの、」


あいつに聞かれてドキッとした。

俺が今からするのは、お前には言えないことだよ。


あいつが拗ねた子供みたいな顔をするから、

思わず昔みたいにしてしまった。


「ガキにはまだはやいこと。」


鼻を摘まれたお前は、ほっぺを膨らまして、

わざと息を止めるんだ。俺が困るのをわかってて。


でも違った。もうお前はそんなことするような子供じゃないんだよな。


「もう、そんなので誤魔化されないよ。」


手首を掴まれて、強引に唇を奪われる。

俺の必死な抵抗は、容易く無効化されてしまった。

そっか、そうだよな。

お前はもう俺よりも随分大きくなってしまったから。


あいつの舌が、俺の唇の境をなぞって、

こじ開けてくる。

侵入を許してしまった口内が、

ゆっくり犯されていくのを俺は感じていた。


何処でこんな技を覚えてきたんだ?

こんなにかっこいいんだ。

いくらでも経験豊富な彼女がいたんだろうな。


固く閉ざしていた目を開けてみると、

あいつは熱情が篭った瞳で俺を見ていた。

脳内がとろとろに溶かされていくようだった。


脳を満たす快楽に腰が抜けてしまう。

ほんとはこのまま身を任せてしまいたい。


でも、ダメなんだ。

こんな醜い俺に、

こんなに汚らわしい俺に、「触んな。」


あいつを拒まなければいけない。

理性が俺を護ってくれた。


スマホだけ持って連絡してきた男のもとへと向かう。上着を着てこなかったから、

夜風がいつもよりも冷たく感じた。

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