本編②-6

ねぇ、聴いて。

これは、俺と愛しいあいつの物語。



「母さん、ただいま。」


いつものように大学を終えて家に帰ると、玄関に見慣れぬ大きなスニーカーがあった。


なんだか悪い予感がして、

急いでリビングへ向かうと、そこにはあいつが居た。


久しぶりに顔をみた。

高校生のお前は、俺が思っていたよりもずっと男になっていた。

スラリとした身体には確かに筋肉がついていて、あんなに丸かった顔は直線美を描いている。

でも、あの頃と変わらない、

お前のふわふわとした栗色の髪と同じ色の瞳が

俺を駆りたてる。


今まで秘めていた情欲が溢れる前に、どこかへ隠さなければ。


母さんが夜のパートへ出かけて、あいつと2人きり。この状況はよくない。

俺にとってもあいつにとっても。


そう思っていたら、スマホの通知が鳴った。

「今からこれる?」

1ヶ月ほど前に知り合った消防士の男だった。


丁度良かった。報われないこの気持ちを

誰でもいいから発散したい。


「出かけるから...」


はやく逃れたい。

この気持ちから。お前から。

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