本編①-9

ねぇ、聴いて。

これは、俺とこの人の物語。


俺は初めてのキスをした。


咲也くんは俺を拒もうと、肩を押してきた。


でも、もう俺は、咲也くんよりも

身長も体格も大きくなってしまったから、

咲也くんの弱い押しなんて効かないよ。


身をよじる咲也くんの頭と身体を、

壁まで行って押さえつけて、


俺は本能に呑まれて、わけもわからず

咲也くんの口内を犯した。


ただ、この人の唇があまりにも冷たかったから。


咲也くんは、腰が抜けたように

ずるりと滑り落ちて、ペタんと座った。

そして、「俺に触んな」とだけ言って、

家から出ていった。


あんなおじさんのことは受け入れるのに

俺のことは拒むんだね。


俺は間違ってしまったらしい。


高3の秋だった。

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