アリスとクラス替えと防御魔法

 私達は2年生になった。


 クラス替えが行われ、私とメアリちゃんのアナちゃんとは別のクラスになってしまったが、ルノー王子と一緒のクラスになった。


 先生は引き続きリリー先生とジーク教官だ。


「あ、あのアリスさん! また一緒のクラスだね」


「そうだねケビン君」


 前の学年から同じクラスだったが、あまり喋ったことの無かったケビン君が話しかけてきた。


 ケビン君は実家が農家だけど冒険者を志願していて、たまに居残りでジーク教官や他の教官に教えを受けていたくらいの印象しか無かった。


「あ、あの……もし良かったらパーティーを将来組みませんか!」


「うーん、それはごめん。私、メアリちゃんとアナちゃんと組むことにしているから」


「そ、そうだよね……ごめん急にそんな事を言って」


「うんん、でも2年生からは冒険の授業で模擬戦をするようになるから、その時はよろしくね」


「は、はい!」


 いきなりパーティーを組まないかと誘われたのは驚いたが流石に最初はメアリちゃんとアナちゃんの3人でやりたい気持ちが強い。


 それに同郷の冒険者で固まると魔法属性の多様性を殺してしまう事にもなる。


 だからパーティーメンバーを増やすとしても他の島の人やよほどうちのパーティーとの相性が良い人しか入れづらい。


 それに男性1人、女性3人は必ず揉め事になるので男性を入れるなら2人以上にしたい。


 私的には全員を女性で固めたいが……。


「あらら、振っちゃった。あの子結構勇気出して言ってたと思うけど?」


 ルノー王子が私に話しかけてきた。


「告白に近いのは知っていますが、流石に直ぐにOKを出せるほど私は尻軽ではありませんし、ケビン君1年生の時にあまり喋ってないのでどんな子なのか掴みかねているかんじですね」


「好感度不足ってことか。ケビンにはそれとなくフォローしておくよ」


「ありがとうございます」


「いやいや、クラス替え早々にクラスの雰囲気が悪くなるのが嫌なだけだよ。でもアリスもクラスが別になったから授業では他の人と組む事があるのを忘れてはいけないよ。今年の夏にはキャンプの授業があるんだから」


 ルノー王子が言うキャンプの授業はお泊り学習みたいな感じでグランドにテントを張って料理を作ったり、哨戒のやり方を学ぶ授業だ。


 ダンジョンの中には絶対に安全な場所が無いので、長時間ダンジョンアタックをする場合必ず何処かで休まないといけない。


 休み方を学んでおかないと将来困ってしまうのだ。


「もっと交友の幅を広げろってことですか?」


「そうだね。僕みたいにとまではいかなくてもクラスで仲が良い人を3人から4人は居たほうが良いんじゃないかな? 放課後は君達メアリやアナスタシアも一緒に勉強するんだろ?」


「まぁそうですが……」


「なら尚更だね」


 ルノー王子はそう言って自分の席に移動を始めた。


 時間を見るとそろそろ授業が始まる時間だ。


 私も慌てて席に戻り、授業の準備を始めるのだった。










 授業内容も最初は1年生の時の延長だったが、数字が大きくなったり、掛け算も勉強に入るようになった。


 読み書きの授業も伝記が続くが、子供用に翻訳された物では無く、読みやすいのを選んでくれていると思うが、原文そのまま教科書に載せられていた。


 なので少々読みにくい部分があり、作者はなぜこの場面でこの魔法を使ったのかみたいな問題を出されることもある。


 今までただ音読したり書くよりはずっと楽しい授業にはなったが、予習と復習しないと時々わからなくなりそうである。


 あと小テストの数も増えた。


 1週間に1度のペースで小テストが行われ、授業をどれくらい理解しているかを把握される。


 点数が悪かったら容赦なく居残りである。


 私的には特訓のスケジュールが狂うので居残りはしたくない。


 なので家に帰ったり、雨の日はしっかり予習復習の時間を多く取るようにしている。


 そしてある日の魔法の授業で肉体強化に並ぶ魔力の放出ができる人なら練習すれば必ずできる魔法についての勉強が行われた。


 その魔法は防御魔法。


 四角形の魔力の膜をその場に出すことで前方からの攻撃を守る魔法である。


 1枚の四角形の大きさは縦横10センチ、それを何枚も合わせることで広範囲の防御を可能にする魔法である。


 ちなみに属性を付与した方が防御力は上がる。


 特に土属性と氷属性の防御魔法は他の属性に比べても頑強である。


 最初のうちは属性を付与しないで魔法を発動させるが、言い換えれば魔力で物質を生み出す魔法である。


 しかも浮かせる魔法ではないので地面や机からニョキっと出てくる。


 空中に1枚ピンポイントで出して防御するみたいなのは重力魔法が使える闇属性を付与しないと行けないらしい。


 体の前面を守る場合縦150センチ、横80センチの防御魔法を展開すると防御魔法を120枚展開しなければならない。


 これに属性を付与すると結構な魔力を消費してしまうので盾を持たない人の最後の手段として防御魔法を使うのが多分正しい使い方だろう。


 まぁ上位の冒険者になると盾から防御魔法を生やして防御範囲を広げる使い方をする人もいるらしい。


 ジーク教官はそれが上手く、ドラゴンのブレスを盾と防御魔法を駆使して防いだと言っていた。


 しかも防御魔法は魔力を込めただけ頑丈になる性質があるので魔力総量が多い人は正しいの意味で鉄壁の魔法になるらしい。


 ただ展開速度や込める魔力総量、形の設定と決めることが多い為に慣れるのには時間が必要だ。


 ジーク教官からも命綱になる防御魔法の高速展開ができないと次のステップを教えることはできないと1ヶ月以上クラスの皆も集中特訓をするのだった。

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