アリスと夢
年を越して新しい年が始まった。
他の島ではこの時期にお祭りをすることもあり、冒険者の人達やお金持ちの人達は他の島に出かけていたりした。
メアリちゃんもお父さんに他の島のお祭りに参加するか誘われたらしいけれど学校があるからと断ったらしい。
ジーク教官との放課後のトレーニングもよりキツイ物が多くなっていた。
腹筋、背筋、腕立て伏せの回数も増えたし走る距離も増えた。
最近ではスクワットや懸垂なんかのトレーニングも増えていた。
そんな基礎トレーニングを欠かさないでやってきたお陰か、眠る時に魔力を体に染み込ませるトレーニングをやって朝起きると凄く調子が良い。
前日よりも魔力総量が少し増えている実感がある。
朝のランニングもスピードを上げて距離を伸ばしても同じ時間に帰ってくれるようになった。
お陰でリリー先生から魔力総量だけなら4年生に匹敵するって魔力総量を測定する機会で調べたらそう言われた。
それに体が成長期に入っているみたくてぐんぐん背が伸びている。
その骨が伸びるところに魔力が流れ込むのでより強靭な肉体が作れていくという好循環になっている。
「アリスも魔力付与が上手くなったね。3階層でも通用する魔弾を常に作れるようになってきたね」
「うん! 頑張ったよ! お母さん」
「偉い偉い。じゃあそろそろ銃を作る作業を始めようか」
お母さんから許可を貰って銃作りを本格的に始めることになった。
「最初は回転式拳銃からねー」
と言われて回転式拳銃のパーツを作っていく。
まずは魔粘土と呼ばれる粘土で型を作っていく。
それに魔力を込めることで固めていき、その上から鉄を流し込んでいき、工具を使ってパーツを削っていく。
土属性魔法が使える人は魔法を使って造形できるらしいが、私には適性が無いのでちまちま手で削っていく。
鉄を流し込んだら水属性魔法で生み出した水に着けて冷やし、パーツを削る時には炎属性魔法で温度を上げてパーツを変形させる。
見本のパーツとにらめっこしながら見本の拳銃とパーツを交換しても銃が撃てる用にしていく。
発射機構の部分が凄く難しく少し削り方を誤ると発射しなかったりするので、何度も繰り返して納得のいくパーツを作り上げる。
約2週間かけて形になったので、試し撃ちをするが、弾丸の集弾性が悪く、射程が10メートルほどしか無かった。
これで完成にするのは私が納得できなかったのでやり直す。
銃口部分を棒ヤスリで削り、銃身部分の曲がりを修正し、グリップ部分を工夫したり、引き金の位置を調整したり、回転式シリンダーの部分をより滑らかに動くように形を整えていく。
最終的には見本の拳銃との互換性を切り捨てる事でその銃に最適なパーツを作っていく。
見本の拳銃よりも重くなってしまったが、納得のいく銃が完成したのは更に1ヶ月も経過してからだった。
お母さん曰く互換性の無い銃は商品にはできないらしいが、個人で使う分には良いでしょうと言われた。
ただこの拳銃もあくまで試作品で、実戦で使う銃には魔術回路を書き込み、軽量化や魔弾の威力を上げる必要がある。
「うーん難しい……」
「まぁ最初のうちはそうでしょ。どんどん銃を作っては溶かしてを繰り返して形を作っていくしか無いよ。そのためには設計図をしっかり描けるようにならないとね」
確かに設計図の有り無しで作る難易度が大きく変わることが今回の拳銃の作製でよく分かった。
私は家にある銃の設計図を頭にとにかく叩き込み、見なくても設計図を1から描けるように勉強するのだった。
私だけでなく、メアリちゃんもお兄さんと一緒にギルドへ素材の買い付けに行くようになり、素材の値段交渉のやり方や冒険者の人から美味いクエストと不味いクエストの違いを教えてもらったり、アナちゃんは料理の勉強を本格的に習うようになっていた。
2人も将来を見据えて動きつつあり、2人と話すことで私も負けてられないとトレーニングや勉強を頑張るのであった。
そんな日々を過ごていたある日、将来の夢について考える時間が冒険の授業で行われ、クラスの皆が発表していった。
冒険者になって大金持ちになり、大きな屋敷に住みたいとか有名冒険者になってジーク教官みたいな教官職に就きたいとかドラゴンのステーキを食べてみたいとか色々である。
中には強い男の人と結婚したいという女の子も居た。
私の番になり、私は
「お父さん、お母さん……そしてジーク教官を超える冒険者になりたい……それが私の夢です」
「ふむ……師を越えるか……良い夢じゃないか」
逆に私はこれ以外に夢らしい夢が無いのも事実だ。
「私にできますかね」
「できるかできないかはアリスの努力次第だがな」
メアリちゃんの夢は
「大きな島を買いたい……いや貴族になりたい。お金で爵位を買いたい」
と言うと皆驚いていた。
「島を買うか……相当な金額が必要になるぞ」
「ジーク教官! 大きな夢だから目指すんです!」
「そうか! じゃあ頑張らないとな」
最後にアナちゃんは
「私は私だけのフルコースを完成させたいです」
モンスターの食材を使ったフルコースの完成を夢とした。
私達はそれぞれの夢に向かって更に努力を積むのだった。
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