アリスとお祭り 2
メアリちゃんとお祭りを見て回るが、初めに向かったのはアナちゃんの食堂だった。
食堂前にテントが張られ、そこにはポトフの入った大きな鍋が3つとハンバーグが鉄板で焼かれていた。
「あ! アリスちゃん! メアリちゃん来てくれたんだ!」
「うん! 来たよ〜ポトフとハンバーグに白パンを1つくださいな」
「はいはーい、500ゴールドになります」
私とメアリちゃんはそれぞれ500ゴールドを渡す。
直ぐに木の容器を渡され、そこら辺に座って食べる。
アナちゃんは接客と皿洗いを交代しながら忙しそうに働いていた。
この感じだとアナちゃんを誘ってお祭りを楽しむのは無理そうだ。
「アナちゃん忙しそうだから手伝ってあげたいけどメアリちゃん駄目かな?」
「いや、困っていたら助けるのが友達でしょ。食べ終わったら手伝いましょ!」
ポトフは大きなソーセージにジャガイモが半分と人参、玉ねぎが入っていて、ハンバーグもホーンラビットの柔らかい肉質ながら齧り付くとじゅわっと肉汁が溢れ出てくる。
家で同じ様なホーンラビットのハンバーグを作った時にはもう少しパサついていた気がするが何か工夫がされているなと感じた。
アナちゃんのお姉さんがハンバーグを作っていたが、ひき肉をハンバーグの形にする時に丸い何かをハンバーグに詰めていた。
おそらくそれが肉汁の正体だろう。
「うむむ、この肉汁の正体は一体……」
「アリスってたまによくわかない所で悩むよね」
白パンも柔らかくてハンバーグの肉汁やソースに付けて食べると口いっぱいに幸せが広がる。
「はぁ……美味しかった」
「お腹いっぱい……さて、アナの手伝いをしますか」
「そうだね」
アナちゃんに食器を返す時にお皿洗いを手伝いたいというと凄く喜んでくれた。
「ごめん、でも本当に助かる!」
「困ったらお互い様だよ。アナちゃんのお父さん、皿洗いしてもいいですかね」
「ああ、してくれるなら本当に助かる」
アナちゃんのお父さんにも許可をもらったのでお皿洗いを始める。
洗い方は錬金術師が作った洗剤をダンジョンの1階層や2階層で採集できるスポンジモンスターという植物を細かく切った長方形のスポンジでこすって汚れを落としていく。
水魔法で水を生み出して、お湯にして汚れと洗剤を洗い流し、魔石で動く乾燥機にセットして乾燥させていく。
乾燥しきれなかった食器をタオルで拭いて次の人が使うため、決められた場所に並べていく。
私が洗い担当で、メアリちゃんが拭く担当で回していく。
「それにしても凄い売れるね」
「食器が拭いても拭いても無くならないわね。大繁盛……良いことよ」
「そうだけどアナちゃん家のハンバーグとポトフはワロン島のお祭りの名物だからね。安いし皆こぞって食べるよね」
「見たことのない顔の人も多いから島の外からも結構来ているわね……」
2時間働いているとポトフの具材とハンバーグの種が無くなり、売り切れとなった。
「アリスちゃん、メアリちゃんありがとう。無事に今日を乗り切れたよ」
「これが1週間続くんでしょ……アナも大変よね」
「ちょっと今日は妹の調子が悪くてお母さんが妹にかかりっきりだったからこんなに忙しかったけど、明日はバイトの人も来るしもう少し楽になると思うんだ」
「ならよかった……アナちゃんはお祭り遊ぶことはできない感じ?」
「明後日なら私お休みって言われているから遊べるよ」
「じゃあその日、私もお休み貰ってくるから一緒にお祭り楽しもうよ」
「うん!」
するとアナちゃんのお父さんがやって来て、手伝ってくれたお礼として私とメアリちゃんそれぞれに3000ゴールドのお金をくれた。
「いやぁ今日は本当に助かった。気持ちだ受け取ってくれ」
「「ありがとうございます!」」
アナちゃんのお父さんは片付けをしているのでアナちゃんもその手伝いに戻った。
私達もこれ以上ここに居ても邪魔になると思い移動するのだった。
お祭りの屋台も夜が更けてくると大人の時間だ。
どこもかしこも酒盛りが始まり、子供向けの屋台が閉まり始めたのでメアリちゃんとも解散となり、家に戻った。
私の魔弾は結局あの大量買いした上級生しか今日は売れなかったが、店全体の売り上げとしては上々だったらしい。
明日も学校があるので私はお風呂に入って日課の柔軟をしてから眠りにつくのだった。
学校では3年生と4年生が昨日買った武器を持ち込んで皆に自慢していた。
それを見て生徒達は武器屋に買いに行こうとか話をしている。
他の生徒もあの屋台の料理が美味しかったとかあのお菓子が美味しかったとか話をしている。
皆お祭りのことで話題が染まっている。
先生達もこの時期は仕方がないと諦めていたし、授業でも話題を共有するためにお祭りの事を中心に話す始末。
まぁそれだけお祭りがこの島では重要なイベントであるとも言うが……。
「私達がこうして学校にいる間も大人達はお祭りを楽しんでいるのよねぇ」
「まぁそれは仕方がないよメアリちゃん、学生は学校に通って勉強するのが仕事みたいな物だし」
「そうそうアナちゃんの言う通りだよ」
「でも他の島のお祭りってどんな感じなのかしら……」
すると私達が廊下で喋っていたこともあり、たまたま通りかかったルノー王子が話しに入ってきた。
「僕他の島のお祭りに参加した事があるから教えようか?」
「あ、ルノーさん」
「ルノー君、どんなお祭りだったの?」
「そうだね……一番印象に残った島ではモンスターを使役する魔法技術を持っている集団がいる島で、お祭りの時に使役している モンスターを競い合わせて勝者を決める賭けのある大会を開いていたね。倒されたモンスターは料理になって振る舞われるんだ。優勝したモンスターも最後には食べられちゃうんだけどね」
「へぇ……そんなお祭りが」
「愛着とかわかないのかな?」
「普段使いしているモンスターは出さないらしいよ。あくまで捕まえてきて強くて美味しいモンスターを振る舞うのが目的で、戦わせるのは他の冒険者にそのモンスターがどういう攻撃をしてくるかを覚えてもらうって意味があるらしいから」
「なるほどねぇ……ルノー君はお祭りは楽しめているの?」
「王族はお祭りの運営側だから楽しむというよりやる事が多くて忙しいかな。まぁ屋台を出している人とは別……人付き合いとかそっち系の苦労だけどね」
「ああ、なるほど」
「そうそうアナスタシアさん、君のお店の料理は凄い美味しかったよ。特にハンバーグ……肉汁が凄くて何か工夫しているね?」
「あれはハンバーグの種に他のお肉の肉汁とスープを凍らせた物を混ぜているんですよ。すると溢れ出る肉汁みたいに焼くとなるんですよ」
「へぇ……良いことを聞いたよ」
「何のお肉とスープの配合は秘密ですけどね」
「ああ、別に技術を盗もうとかそういうのではなく純粋に気になっただけさ」
また! とルノー王子は廊下を歩いていってしまった。
私達も休み時間が終わり、次の授業の時間が迫っていたのでクラスに戻るのだった。
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