アリスと皆とお母さんの冒険者の心得
「ようこそフラー王弟様、ルノー王子様、メアリちゃんとアナちゃん」
ある日お母さんが冒険者時代の話をしてくれるっていうことで時間を作ってくれた。
友達よメアリちゃんとアナちゃんも王子様達の話をしたらお母さんの冒険の話しを聞きたいと日にちを合わせて冒険者時代の話をする会を開いてくれた。
「さて冒険者時代の話しを聞きたいってことだったけど冒険者として何を聞きたいかな」
お母さんまさかのノープランである。
最初に手を挙げたのはルノーさんだった。
「はい」
「はい、ルノー王子様」
「あ、僕もフラーも呼び捨てで構いませんよ」
「じゃあルノー君」
「はい、武器の選び方について聞きたいです。どうやって自分に適した武器を選んだのですか? アンさんはガンマスターって呼ばれていたとお父さん(王様)から聞いたのですが」
「正直武器の適性は私は後から身につけた。私は最初期はナイフで戦ってたんだよ」
「ええ! なんでですか?」
「お金が無かったから。お金が無い時代はサポーターっていう冒険者パーティーの雑用係からスタートしてね。そこでパーティーの人達が使っている武器を間近で見て目の良かった私は射撃に適性があるとわかってね。ただ銃よりも最初はそのパーティーに弓使いが居たから弓を習ったんだけどこれがまぁ適性が無くて維持費が高い銃に切り替えたんだよね」
「その維持費を少しでも減らすために鍛冶屋に勉強しにいって火薬の調合から始まってから、銃の整備方法、弾丸作り、パーツ作り、そして銃本体の製造をできるようにしていって銃を作れるようになった頃にはサポーターから独立して銃使いの冒険者として活動するようになったんだよ」
「まぁ武器の適性は実際に試してしっくりくるものを選ぶしか無いかな。学校で銃含めて実際に武器を触る機会が設けられているらしいから君達はそこで確かめれば良いよ」
「なるほど……近道は無いんですね」
ルノーさんの言葉にお母さんは
「でも初心者にオススメの武器の種類ってのもあるのも事実だよ」
と言って工房から武器を出してきた。
「例えば片手剣とアームシールドの組み合わせ……これはオーソドックスだけど初心者から一流冒険者でも愛用する武器ね。腕の筋力によって剣やシールドの長さや重さを調節しやすい……更新しやすくて取り扱っている武器屋も多い。家のジンが武器を作る時も片手剣とアームシールドが一番多いのよ」
「片手剣とアームシールドですか……何が利点なのですか?」
「一番は軽装備って言われるジャンルの中ではアームシールドのお陰で防御力と機動力の両立できるところ。冒険者って長時間ダンジョンを探索する時はどうしても装具の重さってのが関わってくるの。闇魔法のグラビティ……重力魔法を長時間使えれば別だけど、重力魔法を常に使い続ければあっという間に魔力切れに普通の魔力量の人だとなるから現実的じゃない。だから装備の重さっていうのは冒険者で重要な要素なのね」
「軽いっていうのが大きな利点になるのですね」
「そう。だから同じく軽い拳銃がメイン、サブ共によく活用されるんだけど銃はどうしても弾丸を消費してしまうの。だから継戦能力が他の武器に比べて劣るとされているわ。まぁ魔法や近接用にナイフを持つことが多いんだけどね……」
「初心者にオススメ武器だとクロスボウもあるわ。銃よりも維持費が安くて取り回しは銃に近く、弓に毒や痺れ薬を塗れば敵を友好的に倒す事ができるわ。ただ銃もそうだけど味方に当てないようにある程度の慣れが必要になるわ。ただクロスボウは銃のよう連射ができないのが欠点ね。連射装置を付けると途端に重くなるからクロスボウの利点の軽さが消えるわ」
私が
「クロスボウは良くて弓はだめなの?」
と聞くと
「弓は更に難しいのよ。狙って維持する必要があるから走りながら放つってことが熟練者しかできないのよね。だから初心者に向くかっていったらそうではないの。ただ昔の英雄に弓使いが多いのは銃が未発達だったから弓使いの達人が上澄みとして残って伝説になりやすかったからなのよね」
そう教えてくれた。
メアリが
「アンさん、片手剣と拳銃、クロスボウの他に初心者向きの武器って無いの?」
「両手武器になるけどハルバードね。斧と槍が一体化している武器。これとモーニングスターっていう先端がトゲトゲした鉄球になっている武器も初心者向きね。ハルバードは突くと払う両方が相応のダメージを与えられるから。モーニングスターはとにかく頑丈だから武器の扱いが粗雑な初心者でも大抵のモンスターを効率的に倒すことができるわ」
「ただモーニングスターはモンスターを潰す様な武器だから素材が傷むのよね。柔らかいモンスターなんかは肉ごと潰れてしまったり血だらけ、穴だらけになって皮が売れないなんてこともあるの。ゴブリンみたいに体の一部だけが素材になるようなモンスターなんかにはその部分に当てなければ良いから効率は良いんだけどね」
なるほどと皆納得する。
「もしくは割り切って初期投資は結構するけど魔法の触媒で固めるってのも有効ね。魔力消費量を軽減しながら威力を上げられる触媒を使えれば大抵そういうのは軽いから機動力はピカ一ね。まぁ魔力総量をちゃんと把握できてないと死にやすくなるのだけど」
ボソッと怖いことを言われたが、武器の扱いが本当に駄目なら魔法を集中した方が良いとのことだった。
武器の話から次はモンスターの書物に載っている事はどれだけ正しいのかという話になる。
お母さんは
「モンスターの情報については値段が高い程正確に書かれているわね。町で出回っているような大まかな図鑑じゃなくて専門店が扱っている書物の方が良いわ。安いと大まかな事しか書かれて無くて、素材によっては素手で触ったら怪我をするとかもあるから町に出回っている安い図鑑はあくまで概要だけ。詳しく知りたかったら高い値段を支払って専門書を買う。1つの島だけを拠点にするなら別に良いかもしれないけど、船で各地を旅する冒険者は何冊も専門書を持ち歩くのが普通ね」
と教えてくれた。
アナちゃんがお母さんに今までで一番嬉しかったダンジョンでのマジックアイテムとかありますかと聞いたら
「収納量が10倍あるマジックバッグが一番嬉しかったわ。ちょっと待っててね」
と言ってお母さんがいつも工具入れに使っているバッグを持ってくる。
「見ててね」
そう言うと中から次々と道具が出てくる。
明らかにバッグより大きな銃を掃除する鉄の棒とかがでてくると皆驚いた。
私もいつもお母さんが使っているバッグがマジックアイテムだと思わなかった。
「空間拡張系のアイテムはとにかく貴重だけど得られることができればとにかく有用よ。売るとなったらそれだけで大きな屋敷が建てられるくらいの値段がするわ」
「あとは魔石で火が点きっぱなしになるカセットコンロのマジックアイテムも調理が楽になるから嬉しかったわ」
最後の質問としてメアリちゃんが理想的なパーティーの役割について聞いた。
「理想的なパーティーっていうのはその時々で変わるけど応急手当が全員できること、治癒魔法が使える人、荷物を多く持てる人、水属性魔法使い、料理ができる人、素材を綺麗に剥ぎ取れる人、モンスターについて詳しい人……戦闘で強い人は勿論だけど先に言った事にいかに当てはまるか……自分のパーティーにこれらのどれだけ当てはまる人が居るかでパーティーの継戦能力と生存率が大きく変わってくるわ。私のパーティーは私とジン……アリスのお父さんが水属性魔法使いで、私が料理ができたわ。ジンは力持ちだったから荷物を人よりも持てた」
「今教官をしているジークはモンスターに詳しくて未知のモンスターでも弱点を直ぐに発見したわ。そして素材の剥ぎ取りがとにかく上手かった。この島には居ないけど冒険者兼薬剤師だったコールは治癒魔法が使えたし、治癒魔法を使わなくても薬で回復できる傷や麻痺、毒とかは彼女の調合した薬で十分だったわ」
お母さんの話しを聞くとお母さんとお父さんのパーティーメンバーは最少人数で全てに当てはまっていたらしい。
それでいてお母さんは銃手、お父さんは大盾と片手斧のタンク、ジークおじさんは片手剣とアームシールド、コールさんは魔法の触媒の指輪や腕輪、首飾り、衣服も触媒だらけで魔法の攻撃力や射程をとにかく伸ばしていたらしい。
聞けば聞くほどバランスのとれたパーティーに聞こえる。
「まぁ私のパーティーが理想と思っていた部分を言っただけだけどね。他にも素材売却の時やパーティーの金銭管理、道具の在庫管理ができる人とかダンジョン攻略の為の小道具が作れる人が居たら良かったなぁと思ったことも多かったわ。あ、船での航海の時に活躍できる人とかもね」
「島の外で活動する冒険者ってダンジョンに潜っている時間より船での移動する時間が長かったりするから船の修理ができる船大工の技術がある人が入れば嵐で転覆とかのリスクを減らせるからね。料理できる人は目的地に着くまでの食糧管理スキルは必須よ。あ、釣りが上手いと船で移動する時に喜ばれるわね……多分ジークの事だから釣りの勉強もすると思うわ」
そう教えてくれた。
その後はお母さんの冒険譚を聞いてお開きとなったのだった。
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