アリスと拳銃
スライムとの戦いから私はいつも以上に魔法の練習に力を入れていた。
魔法球を使った魔力操作の練習をしたり、弾丸に魔力付与をしたり……魔法だけでなく拳銃を作ったり発砲の練習も始めた。
庭に金属の盾を置いてそこに拳銃で魔力の込められてない弾丸を放つ。
パン カン
と軽い音がして盾に弾かれる。
私が使っているのは回転式拳銃……リボルバーと呼ばれるシリンダー……弾丸を保持しておく場所が6箇所あり、それが回転することで連射することが出来る拳銃だ。
冒険者の間で一番人気があり、100年近く愛されているヒット商品で、拳銃を使う者が最初に扱うと言われている銃である。
反動が小さく、弾づまりも少なく、バラしての清掃がしやすい等の利点もある。
幼い私でも3発以上の連射は難しいが、2発までなら狙った場所に当てられるくらい反動が少なく扱いやすかった。
「狙った場所に当てられるようになったけど。狙ってから撃つのに時間がかかっちゃう」
私が発砲するのを見ていたお母さんからアドバイスを受ける。
「もっと脇を締めて、両手で引き金を包むような形で握ると良いわよ」
と教えられた。
「ねぇお母さん。銃以外の武器は教えてくれないの?」
「初心者冒険者で一番威力が出るのは銃なの。強くなっていけば肉体強化されて剣の一撃の方が威力が出てくるようになるけれど。それまでは徹底的に銃の扱い方を覚えた方が良いわよ。なかなか初心者冒険者は高価な銃を用意できないんだけど……アリスは銃を作れるようになるまで仕込むから安心してね」
「うん……わかった!」
ある日、久しぶりに3人で遊ぼうということになった時にメアリちゃんとアナちゃんの2人も戦う為の勉強を始めたと言われた。
「メアリちゃんとアナちゃんも戦う勉強を始めたの?」
「うん。私……スライムが怖くて何もできなかったし、スライムに体当たりされて凄い痛かったからせめて自分が守れるくらいにはなりたいと思って」
「私もアリスが戦っている時に何もできなかったのが悔しくて……あの日探検に誘ったのが私だったのに、守られるだけで……それに私は将来冒険者になって色々な料理を作りたいって夢があるから!」
私も冒険者になりたいが、メアリちゃんみたいな明確な夢みたいなのは無かった。
「アナちゃんも冒険者になるの?」
「うん……でもなるならメアリちゃんとアリスちゃんと一緒がいいなぁ……」
アナちゃんもまだ明確な目標は無いみたい。
アナちゃんとメアリちゃんは片手剣の練習をしているらしい。
銃にしないのと聞いたら頻繁に整備ができないから暴発したら危ないから触れさせてくれないらしい。
私はメアリちゃんとアナちゃんに教わりながら木の剣で練習をするようになるのだった。
「ジン、ようやく気持ちの整理ができた。引退して教官になることにするぜ」
ジークおじさんがある日工房に来るとお父さんとお母さんとそう話していた。
「ジークおじさん冒険者辞めるの?」
「ああ、一生分の金は稼いだからな。今度はアリス達みたいな子供達を育てるのを頑張るようにするよ」
今日はパーティーメンバーだったお父さんとお母さんに決意表明を言うために来たらしい。
「辞める時期を見誤った冒険者は死ぬからな……ジークが死ぬのはパーティーメンバーとして嫌だったからな」
「まぁ俺的にはあと5年は出来ると思ったが……まぁ十分稼いだからな」
「それがいいわ。でもそうなると来年から教官かしら?」
「ああ、半年間先輩の教官の補佐をしながら勉強だよ……俺勉強苦手なんだけどな」
笑い声が工房内に響き渡る。
「でもそうなるとアリスが来年から幼少学校に入学だからジークに教わることになるな」
「ジークおじさんに勉強教えてもらえるの?」
「俺は勉強というより冒険者になるためのイロハを教えることになるだろうな。最初はアリスはアンとジンに教わった範囲になると思うけどな」
「ふーん! でも私頑張るよ! 冒険者になるために」
「アリスは冒険者になって何か夢はあるのか?」
ジークおじさんの言葉に私は詰まってしまう。
「ハハ、まだ冒険者になることが夢か。でも冒険者になる前に夢を考えておいた方が良いぜ」
「……あのねジークおじさん。私はお父さんとお母さんの冒険の話が好きだったの。だから私もお父さんやお母さんみたいな冒険がしたくて冒険者になりたい……じゃあ駄目かな?」
「駄目じゃないけどもう一歩踏み込んだ夢があった方が良いぜ。例えば大金持ちになりたいとかドラゴンを倒せる力が欲しいとか……夢……いや、目標だな。これがある冒険者は大きく伸びるからな」
「そうなの?」
「夢の無い冒険者はある程度になると現状に満足してしまうんだ。それでも良いけど大抵は大成しないんだよ。俺が教える教え子達にはそこで足踏みして欲しくないんだ」
「よく考えてみる」
「おう、そうしろそうしろ」
ジークおじさんに夢についてよく考えるように言われるのであった。
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