アリスとメアリとアナとスライム

 銃は何種類もある。


 例えばゴブリンとかスライム、ホーンラビットみたいな小型かつ柔らかいモンスターを倒すのは拳銃。


 サンドワームな暴れ牛、オーク、オーガみたいな中型モンスターは小銃。


 ドラゴンやクラーケンみたいな大型モンスターには大型狙撃銃やガトリングガンみたいな大型銃を使うみたいな住み分けがある。


「リボルバーと呼ばれる拳銃が構造や安定性から好まれているわ。仕組みも他の銃に比べたら簡単だしパーツも分かりやすい」


「銃って分解ばっかりしているけどどうやって作ったりするの?」


「作り方は金属を型に流してパーツを作っていくことになるわ。大きな町とかだと大型銃を作れるのだけど、私とお父さんの工房では小銃を作るのが限界ね」


 お母さんは大型銃を見本として現役時代に使っていた物を見せてくれたけど、仕組みが複雑……というより全体的に大きいし、金属も魔法金属と呼ばれる普通の鋼よりも強度があったり熱に強かったりする物が使われているのがわかり、しかも私では持ち上げることすらできなかった。


「重い!」


「はは、そりゃそうよ。これは肉体の強化魔法を使わないと持って動くことも難しいわ」


「強化魔法? 属性魔法にはなかったよね?」


「確かに属性魔法は8種類だけどそれ以外にも魔法がある。身体能力の向上という魔法はどんな人でも使うことが出来る。それこそ属性魔法が使えない体質の人でもね。ただ魔法というよりは食事によって得られた魔力が体に循環しているだけとも言えるかな」


「どういうこと?」


「アリスにはわかるか分からないけど代謝の一環ということだね。魔力のある食べ物を食べれば魔力がどんどん溜まっていくし、一度魔力を得られれば魔力の総量は食事と寝ることで回復するのね。で、体に余った魔力が筋肉とかに結びついてどんどん筋肉……力が強くなるの」


「食べれば強くなる……」


「そうね。まぁ魔力は筋肉に宿るって言われているから体を鍛えないといけないんだけどね」


「あれ? でも私あんまり鍛えてないんじゃ?」


「小さいうちから厳しいトレーニングをすると体が小さくなったりしちゃうから幼少学校には入るまでは魔力の操作を覚えていたほうが良いの。達人になると寝ている間も魔力を無意識で操作して筋肉を鍛えながら疲れを取ったりするらしいわよ。魔力操作のコツは掴んだみたいだから……今度は寝ている間に筋肉に魔力を流すイメージをすると良いわよ。あとはよく遊ぶ!」


「はーい!」


「さて、今日のトレーニングも終わりだから近所の子と遊んできなさい」


「わかった!」


 私はお気に入りのリュックに魔法球を詰め込んで遊びに出かけるのだった。







 広場では近所の子供達が遊んでおり、まだ大きな子は幼少学校の時間なので幼少学校に通う前の子供達が多かった。


「「アリスー!」」


「あ、メアリちゃんにアナちゃん!」


 同じ歳のメアリちゃんとアナスタシアことアナちゃんが遊んでいたので混ぜてもらう。


 メアリちゃんは商人の娘で、赤紫色の髪の毛をポニーテールにしていて髪の毛と同じ色の瞳をしている。


 アナちゃんは料理人のお父さんを持つ子で、白銀の髪の毛をショートカットという髪型で、頭にダイヤ型を幾つも繋げた黄色いカチューシャを愛用している。


 赤ちゃんの頃から親同士の繋がりがあって、その流れていつも遊んでいた。


 幼馴染ってやつだ。


「今日は何して遊ぶ?」


 アナちゃんの言葉にメアリちゃんが


「島の探検をしようよ!」


 と提案する。


 私もアナちゃんも異論は無く、ワロン島の探検を始めた。







 ワロン島……ワロン王国のある島で、中くらいの町が1つと村が5つある島で、町の近くにダンジョンがある。


「「「ワロン! ワロン! 我らはワロンの子供達〜」」」


 ワロンの国歌とまではいかないが古くから歌われている歌を歌い、ワロン島を探検する。


 探検と言っても隣の村まで遊びに行くくらいであるが……。


 モォーと牛が鳴くのを見たり、飼い犬を飼い主の許可を貰って撫でたりする程度の探検だったが、今日は少し違っていた。


「も、モンスター!?」


 アナちゃんが驚いて尻もちをついてしまう。


 プリンという音と共に草むらから飛び出てきたのは最弱のモンスターのスライムである。


 ダンジョンの1階層から逸れて出てきてしまったモンスターだろうか……。


「ど、どうしようアリス逃げないと」


「でも私達の足の速さだと追いつかれちゃう……戦おう」


「ええ!?」


「でもモンスターだよ!」


 メアリちゃんとアナちゃんは反対意見を言おうとするけれど、スライムがこちらに気がついて体当たり攻撃をしてくる。


「「アナちゃん!」」


 尻もちをついていたアナちゃんが襲われてしまう。


「キャ!」


 アナちゃんがスライムの体当たりで吹き飛ばされ、傷だらけになってしまう。


「メアリちゃんアナちゃんを助けて! 私はスライムをなんとかしてみる」


「危ないよアリス!」


「早くアナちゃんを見てあげて!」


 私はキリっとスライムを向く。


 スライムは臨戦態勢を整え、こちらに向かって体当たりを仕掛けてきた。


 私はよく見て、ギリギリで避ける。


 そのままリュックを投げつけるが、スライムにはあんまり効いていないっぽい。


 ポヨンと投げつけたリュックをいなしてしまい、再び私に体当たりをしてきた。


 私は避けながらスライムに蹴りを入れるが、ジュポンと液体の中に足が入って威力を殺されてしまう。


「足が抜けない!」


 スライムは私が体内に入ってきたのを良い事に液体を体に入れようとしてくる。


 口に向かってスライムが向かってくる。


 怖くて目をつぶってしまいそうになるが、私が魔力操作を失敗した時にお母さんが言っていた言葉を思い出す。


『魔力操作に失敗して魔力が暴発してしまったね』


『ごめんなさい』


『魔力操作の手順を思い出そうか……魔法の基本だからね!』


「魔力を爆発させる!」


 私はカッと目を見開いて足を経由してスライムに魔力を流し込んで一気に魔力操作で魔力を乱していく。


 ピギィとスライムは悲鳴をあげてグリンとスライムの核と思われる部分が反対側に動く。


 私はスライムの核に手を伸ばし、触れた瞬間に魔力を再び乱した。


 するとスライムはバシュと核が崩れて青色の液体が周囲に飛び散った。


「ハァハァ……」


「アリス!」


 メアリちゃんが飛んできて私に抱きついた。


「メアリちゃん、アナちゃんは」


「わ、私は大丈夫……少しお腹が痛いけど歩ける」


「アリス! 手が爛れてるよ!」


「……いたたた!」


 スボンや靴を履いていた足は大丈夫だったけど、直接核に触れた手の皮がズル剥けていた。


 私達は急いで町に戻り、家に帰ると、ズリ剥けた手を見たお母さんは直ぐに近くの病院に連れて行ってくれた。


「スライムの核を直接触れたか……無茶をしたねぇ」


 おばあちゃん先生が診療してくれて、治癒魔法で傷跡が残らないように綺麗に治してくれた。


 アナちゃんも病院に来ていて診てもらったら肋骨が折れていて私よりも重傷だったらしいが、助けてくれてありがとうと言われ、アナちゃんのお母さんにも見捨てないで助けてくれてありがとうと言われた。


「危ないから本当は逃げた方が良いんだけど……よくやったね」


 お母さんに怒られるかと思ったが、優しく撫でられて褒められた。


 お父さん達は郊外でスライムとは言えモンスターが出たということで、大人達で周囲の見回りに向かったらしい。


 後で聞いたが、ダンジョンから出てきたスライムが巣を作ろうとしていたらしく、発見が遅れていたら家畜に被害が出ていたかもしれないと言われ、よく無事に帰れたなと言われた。


 スライムが複数匹居たら絶対に勝てなかったので、私は運が良かったと思うのとお母さんに魔法の練習をもっと真面目に受けるようになるのだった。

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