第五話 勇者

今朝懐かしい夢を見た

「あなた」と過ごして一年経った時に話したことだ

記念として好きなものを作ろうとしたんだっけ

結局無理なことを言われたから代わりに昔習った踊りを披露したっけ

そう思いながら協会に向かう

マスターと話す

そしてある程度方向性を決めたら刺身っていうものを食べに行こう

そんなのんきなことを思っていた


「え?まだですか」

「すみませんが早すぎます

まだ早朝も早朝です

時計を見てください!

正午って言いましたよね!」

そういえば昔「あなた」がいってたっけ

『世界には時計というものがあるけど正直僕らはいらないよね~

だって時間気にする必要ないし』

好きな時間に起きて仕事して暗くなったら寝る生活がこんなところで裏目に出た

「すみません

待っておくので時間になったら呼んでください」

「わかりました」

受付の人のはぁという心の声が聞こえたようだった

「ちなみにご飯とかどこかで食べれますか?」

「それならここでも食べれますよ

隣にレストランがあります」

「ありがとう」

仕方がない

軽めにご飯を食べて待っておこう



「さて久しぶりの王国だ」

イダリア王国

昔異世界人が作った国

だから国名は似たようなものになっているし料理だって似たものが多い

そして僕を召還した国でもある

「勇者様、そろそろだぜ」

「あぁマスターを待たせるわけにはいかないしね」

「てか腹減った」

「じゃあ先にご飯食べに行こうか

協会横のレストランは美味しいよ」

「あぁ!期待しとくぜ」

そんなたわいもない話をしながら向かう

にしても少し早いか?

まぁいいだろう

最悪協会で惰眠をむさぼろう

…イダリア王国に勇者とその仲間がついたというニュースは瞬く間に流れた


美味しすぎる

私が初めてのレストランで料理を食べた感想である

具材はそこまで豪華なものは使っていない

しかしそれを感じさせないくらいにこだわりがすごい

例えばパン

普通のものは湿度や温度によって味が絶妙に変わるものだがそれが一切ない

調節するのにもかなりの技術がいるはず

「シェフ!このパンはどうやって作っていらして」

「流石気づきましたかお客様!

そちらは火と水の魔術を用いて一定の環境を作り出ているのです」

「なるほど

斬新ですがどうしても…そのお金とかは」

「実は魔術の訓練をしたいという傭兵を使っております

私たちもおいしいものを作れて傭兵も魔術の訓練になる、まさに一石二鳥!」

流石、傭兵協会、素晴らしい

「しかし、その作り方ならばこんなことも…」

「なんとそんなものが!」

…朝早すぎて客がいなく、ほとんどシェフと私の料理会のようになっていた

がお客さんが来た

「シェフ久しぶり!」

「おぁこれは勇者様!

魔王討伐おめでとうございます

お隣の方が仲間さんですか」

シェフの一言で振り向く

この人が勇者ケンタ・シンノ

年齢は私と同じくらいだろうか

それなのに世界を救っているのか、凄い

「本当は仲間は作るつもりなかったんだけどね」

「俺はコウリュウ、ヨロシクな」

「彼には前衛を担当してもらってる」

十歳前後の少年がそう言う

勇者の仲間という割には幼くないか?とは思うが

とりあえず絡まれたら面倒だ

早く出ていこう

そう思い勇者の横を通ったときだった

「おい、てめぇ…魔物くせぇな」

コウリュウという少年にそういわれ、勇者につかまる

「痛っ」

「シェフ、マスターを呼んできてください」

「え、えぇ」

身に覚えのないことで大騒ぎになってしまった

まぁ下手なことはしない方がいいだろう

そうしておとなしく待つことにした


「んでこの騒ぎってことか」

「そんな言ってる場合か

コウリュウの鼻は犬並みなんだから」

「犬っころと一緒にすんなよ!」

私を押さえ、縄にかけた後に漫才を始める勇者一行とマスターという人物

正直体が痛くなってきし、ギャラリーの目が痛いからほどいてほしい

「んでコイツのどこが魔物なんだ」

「ちげぇよ

こいつのバックから匂うんだ」

「魔物の違法売買ってところか?」

「さっすが勇者様だぜ!」

「はぁ、コウリュウさん初めましてだけど既に勇者厄介ヲタなのわかるわ」

「…へヘッ照れるなぁ」

「「ほめてない」」

「…んなことはどうでもいいんだよ」

「ああ、肝心のバックの中身だな」

「じゃあ開けるぜ」

そういうとバックをひっくり返す

…ちょっと待って!

「あなた」が入った瓶が割れる!

急いで魔術を発動させる

瓶を柔らかい膜で包むイメージで

…なんとか瓶は割れなかった

「…てめぇ、今なんで魔術を発動させたんだ」

そういうとコウリュウさんは私の胸ぐらを掴む

マスターと勇者は魔術を発動させた瓶をみる

「…この砂、黒いし定期的に動いている」

「おい!勇者、それをゆっくり机に置け!

コウリュウさんはそいつの縄をとけ!」

「あぁ⁉なんでだよ」

「こいつはサンドマンの一部だ!」

そうマスターが言うとギャラリーが大慌てで距離を取る

「はぁ?なんでそんな危険な代物があるんだよ」

「今からそいつに聞くからほどけって言ってる」

「…わかった」

そういうとやっと縄がほどかれる

体中がほんっとうに痛い


「すみませんでした

勇者一行もこの通り反省しています」

サンドマンの一部は夫の物ということ、アルさんからの招待状、そして本当の身分を説明すると勇者一行は全力で謝りマスターは人が変わったようだった

「いえ、そんな礼儀正しくしないでください

元王族というだけで今はただの傭兵ですし」

「んじゃあいいか」

あっさりしている

王族とも接する機会が多いらしいし、こんなものか

「んじゃあ、アリスちゃん

君に傭兵として仕事をあげよう

勇者と一緒に戦争を止めてほしい」

そういうとマスターは説明を始める

魔王を倒したことにより世界は平和になったように見える

がしかし各国の関係は悪化

これにより戦争がいつ起きてもおかしくないほどに

そこで民の希望である勇者と行動し各国の弱みを握ってほしいと

各国が過去何をしたのか

そのことを勇者が広めれば国を頼り切っていた民も離れ、結果戦争ができないほどに民の統一が取れなくなるだろうと

「私はなぜ同行する必要が」

「君は知りたくないか?

なぜ君の家族は殺されたのか」

「…それと各国の戦争が関係が?」

「いいや、ないだろう

しかし各国の裏を見ることによって君の家族が何をしたのか

それを知ることはできるだろう」

「私の家族は何もやっていない!」

「ならば自分の家族が正しく、今の帝王が間違っていたと証明できる」

そこまで言われたら何もできない

「わかりました

…大声出してすみません」

「こちらこそ無神経なことを言ってすまない

気を取り直して依頼だ勇者

各国の闇を暴き戦争を食い止めてくれ」

「…わかりました」

そうして私は勇者一行に加わった

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