夢の章 悪夢の後
「僕はいつでも君のそばにいるからね」
そんな言葉を聞いて私は
「はぁ…」
そんな返事をする自分に少し驚く
心底どうでもいいようだった
前までの私だったらどう返していたのだろう
「心配かけさせてしまい申し訳ありません」
そうして仕事に戻る
「…これは少し骨が折れそう」
私が住んでいる屋敷は大きい
三階建てで十五部屋ある
が実際に使っているのは一回にある四部屋だけ
私の部屋、主様の部屋、風呂場、キッチンのみである
私の仕事はその四部屋と一回の窓、床を掃除すること
なのだが精神的にもきつく、走りすぎたせいか足が痛いわで仕事は捗らない
三日かけてようやく窓ふきが終わった
一日で三枚の窓を拭いたことになる
流石にこれはひどいと思う
でも捗らない
体は重いし足は痛いし正直辛いし
今日は床掃除をしよう
「ねぇ!遊ばない?」
「…すみません
まだ仕事終わりそうにないです」
「後ででもいいからさ」
「そういうわけにはいけません」
そういい仕事を再開しようとするが
「いたッ!」
右足に激痛が走る
「ちょっと見せて」
「いえ、これくらい大丈夫です」
「骨折してるじゃん!おとなしくしてて!」
「だから、だいじょ…ちょっと何するんですか!」
そういう私を無視してお姫様抱っこをし、歩き出す主様
怒りとかよりも恥ずかしさが勝ってしまう
「あの、重くないですか?」
「え?全然」
意外と力持ちなんだなって胸の中で思った
「一応、応急処置はしたから
それでも無理に動くのはダメだからね」
とカンカンに叱られてしまった
仕方ないので庭いじりをよくする主様の手伝いをする
「にしてもここは砂だらけですね」
「ここは帝国唯一の砂漠地帯だからね」
「砂漠?」
「うん、砂とか礫とかしかないんだ
あとはサボテンって呼ばれる植物とかね」
「主様は同い年なのに色々なことに詳しいんですね」
「いやぁーそこまででもないよ
…っていうか主様って呼ばないで、堅苦しいじゃん
僕は君とは友達になりたいの
だから***って呼んで!」
「…分かりました
では……何故でしょう、すごく恥ずかしいです
やっぱり主様で」
「えぇ⁉.
…じゃあせめてアレイヤで!」
「では、アレイヤ様よろしくお願いします」
「様つけなくていいよー」
そうしてアレイヤ様との不思議な日々が正式に始まったような気がした
そんなこんなで暮らし始めて三か月
「おーい、いるか?」
私が来て初めての来客だった
しかしアレイヤ様とは知り合いのようなそぶりだ
「アレイヤ様、お客様です」
「…ん?あぁ今向かうよ」
アレイヤ様はだいたい庭で土いじりをしているか寝るかして過ごしている
まぁ私も仕事が終わると暇になる
それはそうと来客なんて初めてだ
とりあえずお茶でも準備しよう
どうやら二人は外で話しているらしい
「お客様、お茶いかがですか」
「ん?どちら様で」
「紹介するよ
最近家で働いてもらっているアリスちゃんさ」
「初めまして、ご紹介にあずかりました
アリスです」
「これは丁寧にどうも
私は聖王国で商売をさせてもらっているザビル
ここには半年に一回ほど物資を提供しています」
「外に出れない僕らの生命線さ」
「はっはっは
そこまで言われると光栄ですな」
「何故こんなことを?」
アレイヤ様は外のことについて全く知らない
なので貨幣というものも知らなかった
ということは無償でもらっていることになるのだが
「それはですね
…宗教上の理由です
何時か分かる時が来るでしょう」
はぐらかされた
「では!あまり長居するわけにはいきませんので」
「バイバイ~」
「ありがとうございます」
そういうとかなりの量の木箱を置いて去る
「じゃあこれ一緒に運ぼう」
「はい」
一箱持ってみるとかなり重い
こんなものをたくさん運んでくれたザビルさんには感謝しかない
「アリスちゃん」
運びながら声を掛けられる
「僕は君のお父さんに助けられたんだ
だから今度は僕の番さ」
アレイヤ様はおそらく初めから知っていたんだ
私が王女であったこと
帝王だった父が殺されたこと
私が今の帝王から身を隠しているから街に出れないこと
もし私がここにいると帝王が知ったらアレイヤ様もただでは済まないだろうに
そんな彼の優しさに瞼が熱くなる
「…ありがとうございます」
木箱に顔を隠してしまう
その間アレイヤ様はただ私の背中をさすってくれた
「アレイヤ様は好きな食べ物とかありますか」
「んーそうだね
イダリア王国の魚料理かな
たしかそう刺身!
生で魚を食べるんだよ
ただ保存法が特殊だからあまり食べれないんだ」
「魚を生で?
確かに魔術を使えばできそうですが
…できれば普通の料理がよかったです」
「本当にごめん!
…じゃあさ初めて二人で旅に出るんだったらイダリア王国行こうよ」
「……ですが」
「いつまでもこのままなわけないよ!
だから楽しみにしてて」
「…はい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます