第二話 世界常識

少し時間がたって落ち着いたのだろう

アルさんは私の正面にある椅子に座り、話し始める

「積もる話はありますがこうしている間も危険ですので手短に済ませましょう

旅を続ける上で必要なことだけ言います」

「助かります」


最初に商品売買について

十年前と紙幣制度というのは変わらないが進化した

異世界からの人間が昔伝えたそうだが最近になり紙幣に使われる紙の原料が公になり、偽札といわれるものが作られるようになり、使い物にならなくなってしまった

しかし完全になくなったわけではなく、商業協会と呼ばれるところでチケットと物品とを交換することができ、逆に商業協会に属するところであればチケットで物を買うことができる

また特別な紙を使っているらしく魔法での製造ができなく、本物か判別する道具も簡単に作れるためかなり主流になっているらしい


次に南の森が広がる魔国には昔から魔族と呼ばれる人間と動物のハーフのような存在がいるらしい

彼らは人間から迫害を受けている

しかしそれに反抗した魔族がでてきた

そんな彼らの長が魔王と名乗り報復を行うと宣言

しかし異世界からの勇者によって倒されたのだという

勇者の名は「ケンタ・シンノ」

今では勇者は民のあこがれであるらしい

なので旅の途中で勇者の話をよく聞かれるだろうと

あったことはないのか?などだ

中には過剰な思いを持つ人もいるらしく、知らないとは言わない方がいいということだ


そして身分制度について

帝国と王国では王族、貴族、平民に分かれている

平民は貴族に一定の税を払わないといけない

この税はそれぞれの貴族が決めていたのだが最近は帝王が決めているらしい

それも少ない税であるため平民は喜んでいる

貴族は周辺の土地の統治をおこなっている

彼らは王族に税とを払い、いざという時の兵力を蓄える必要がある

そして王族

彼らは国の統治、外交などを担当

そして国家の責任は王族の責任

なにかミスをしてしまい国や民が危険になれば重い罰を受ける必要がある

そんな彼らだが王国では血筋から帝国では力の証明により決まる

今の帝王は前の帝王を殺すことにより証明した

聖王国は少々特殊なので省くということだ

そしてどの国にも属しない傭兵

傭兵協会というところに属しており金さえ積めばどんな国にも就くのだという

そして身分的には私は傭兵になるそう

アルさんの知り合いが今から向かう王国支部の傭兵協会にいるそうで紹介状を出してくれるという

…苗字というものは貴族と王族以外はないらしい

私はこれから「アリス」と名乗るということか


「そして最後に魔術についてです

基本的には火、水、風、土の四つの属性があります

他に闇や光がありますが闇は魔族しか使えず、光は魔術の法則に当てはまらないので省きます

魔術は初級、中級、上級に分かれます

初級は当てはまる属性を作り出すこと

中級は操ること

上級は形を変えることです

例えば火属性は初級で炎を、中級では炎を上空へ操り炎の柱を、上級ではファイヤーバードなどの意思を持つ魔物を作ることができます

なので工夫次第では中級の使い手が上級に勝つことだってできます」

そこで疑問になる

「魔術?魔法でなくて?」

私が城にいたころは魔法使いというものがいた

彼はいつも父のそばで使えており父の右腕といっても過言ではなかった

私もよく遊んでもらったものだ

まぁ私を守るために死んでしまったが

「…魔法とは魔術の原型です

なので魔術よりも強力です

しかしそれの使い手は魔法使い、魔法に使われる人間と呼ばれます

一度魔法を使うごとに強力な副作用により最悪死に至ります」

絶句した

彼はそんなに強かったのか

しかしそんな人間を瞬殺してしまうあの男が恐ろしかった

「なので大体魔法使いは抑止力と使われています

王国は炎の魔法使い、聖王国は風の魔法使い、帝国は水の魔法使いがいました

しかし前帝王が殺されたとき、水の魔法使いも一緒に殺されました

なので実際は魔法使いよりも恐ろしい存在がいます

…私が聞きたいのは魔法使いを殺したものです

今の帝王は一夜にして城にいた前帝王派の人間全員を始末したことになります

一体何人ぐらいが謀反を起こしたのでしょうか

前帝王の暗殺から始まったと聞いております

あまり大人数ではないでしょう」

「…一人」

「え?」

「今の帝王が一人でやりました

少なくとも父、母、魔法使いを殺したのは彼一人」

アルさんは恐怖で顔が引きつる

「…まじか」

二人の間に重い沈黙が流れる

無理もない

当時の年齢は、13歳という若さであった


そんな沈黙を破ったのは初めに私に話しかけてくれてくれた男性の大きな声

「これは帝王様!ようこそお越しくださいました!

今主任を呼んできますのでかけていてください」

反応は早かった

アルさんは無言で大量のチケットと紹介状が入った袋を渡す

「この方をもうすぐ出る馬車まで急ぎで送れ」

すると初めからそこにいたのだろう

入口から細い男が入ってくる

「あいあい分かりました

じゃあこっちです」

そういうと部屋の中に入って屋根裏を開ける

「さ、ついてきてください」

そういうとスルスルと狭い空間を渡る

「アルさん、ありがとうございました

…あの男性に二回も救われました

お礼を言っててください」

「彼は給料でも上げときますよ

お嬢様もお元気で

砂に幸運が在らんことを」

そういうとアルさんは部屋を出ていく

それを見送り私も狭い屋根裏を渡っていく


屋根裏を渡りきると、そこは外だった

「ではここから飛んでもらいます」

どう考えても大けが、最悪死に至りそうだがそんなことはアルさんはさせないだろう

彼を信じて飛ぶ

上から感心したような声がしたと思ったら洗濯物の山に突っ込んでいた

「ではそこから真っすぐ見える馬車に乗ってください

私はここまでです

…なかなかやるじゃないですか、ではまた」

私は少しうれしく思ったが、急がないともうすぐ馬車が出そうだった

ここで躓くわけにはいかない

「あなた」を見つけるためにも


帝王と呼ばれる青年はもう見えなくなる馬車に向かい

「何が正しく、何が間違っていたのか

その目で見てきてくれ、アリス」

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