第33話 白熱の攻防、女神VS三邪神!!
そっと、リトルはペットボトルのお茶を差し出す。
「あ、どうも、ありがとうございます」
自称、女神はぺこりと頭を下げて受け取る。
結局、追い返すわけにもいかず、この世界の大家を受け入れたリトル、セティ、マリフは居心地悪そうに身じろぎする。
「で、本日のご用向きは……?」
意を決して。
リトルが切り出すと、彼女は居住まいを正して咳払いする。
「切り出しづらいことなのですが……」
「「「切り出しづらいのであれば切り出さないで結構です」」」
「この世界から」
深々と、女神は土下座する。
「出ていってくださいませんでしょうかァッ!!」
女神、渾身の土下座であった。
あまりにも美しい角度と所作に対し、三邪神は感嘆の声を上げる。
「そのぉ……神格を纏っているお主が女神であることは疑いなく、わしらとしてもこの世の大家さんの立ち退き交渉に応じるつもりではあるのじゃが……」
リトルは、小首を傾げる。
「なんで、出ていって欲しいんじゃ?」
「なんで!?」
愕然と。
顔を上げた女神は、大口を開けて叫ぶ。
「なんで!?」
「う、うん……なんで……?」
ガタガタと震えながら。
腰を抜かした彼女は、信じ難いものを見る目で三邪神を捉える。
「人様の世界に不法侵入しておいて!?」
「えっ……だって、旅行みたいなもんじゃし……」
「人様の世界がこさえたダンジョンを血の海にしておいて!?」
「まぁ、我らはDtuberであるからな……」
「人様の世界の住人を連れ回して失神させたり、CLAN◯ADの抱き枕カバーに詰めてボコったり、お嬢様言葉のモニターの化け物にして実の父親を脅迫させたり、初音◯クの3Dライブに合わせた音ゲー形式で腰振らせておいて!?」
「とは言っても、エンタメですからね……」
「エンタメって言ったら、なんでも許されると思ってませんか!?」
「「「うん」」」
しくしくと泣きながら。
女神は、ドン引きしている三邪神を指差す。
「な、なんで、泣いてるわたしを見てドン引きしているのですかぁ……!!」
「だ、だって、アポ無しで来た女神様が急に泣き始めるとか……正直、ドン引きじゃろ……」
「最初にアポ無しでやってきて、急にめちゃくちゃやり始めたのはそっちでしょうがぁ!? なんで、わたしがおかしいみたいな論調で責めてるんですかぁ!?」
「まぁまぁ、薄汚い泣きべそかいてないで落ち着いてくださいよ」
女神は、泣き腫らした目でマリフを見つめる。
「そもそも、そのアホみたいなコスプレはなんですか? 良い歳して恥ずかしいとは思わないんですか?」
「いや、だって、女神らしくしないと貴方たちに女神だと認められない可能性がありますし……人間たちが持つ女神のイメージってこんな感じですよ、大体」
ひらひらと。
「そもそも、貴方たちだって、アホみたいな擬態してるじゃないですか……その中身、触手と蠕虫と目玉でしょう? うげぇですよ、うげぇ」
「コスプレ女神よ、安堵するが良い。我ら、折よく、この世界から出ていく算段を立てていたところよ」
セティの言葉を聞いて、パァッと女神の顔が明るくなる。
「ほ、本当ですか!? 出ていってくださるのですか!?」
「本当じゃ! わしらに二言はない! ただ、最後に――」
リトルは、サムズアップする。
「わしらの
すっと。
女神の笑顔が消える。
「……ダメです」
「え? なぜですか?」
マリフの疑問に対し、女神は猛反発する。
「あ、当たり前でしょう!? 貴方たちの影響力はこの数週間で鰻登り、偶像崇拝なんて認めたらわたしに対する信仰が失われるではないですか!? こ、この世界における女神としての格が下がってしまいます!!」
「「「下がれば?」」」
「下がればァ!? ハァッ!?」
顔を真っ赤にして。
震える握り拳を、胸の前にまで持ってきた女神はひくひくと笑う。
「こ、この世界の女神として、下賤な暴力に訴えるわけにはいかないと思っていましたが……そっちがそういうつもりならば、こっちにも考えがあ――バァッ!?」
リトルの拳が、女神の顔面にめり込む。
どうっと倒れた女神は、両手で頭を守って亀のように丸まった。
守備表示になった女神を囲んだ三邪神は、喜び勇んでゲシゲシと蹴りをいれる。
「正当防衛じゃ!! 正当防衛じゃ!!」
「我らに正義あり!! 我らに正義あり!!」
「舐め腐った口利いてんじゃねぇぞ、女ァッ!! こちとら下賤な暴力のプロフェッショナルたる邪神だぞ、ゴラァッ!!」
「わたし、この世界の女神なのに!! 女神なのに!!」
ボコボコ、ゲシゲシ。
三邪神からボコられた女神は、ぽーいっと外へ放り出される。
「…………」
バタンと、扉が閉まって――ボロ切れのようになった女神の頭に、ぽこんっと雷おこしの空箱がぶつけられた。
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