【07】ウィリアムの魔法

ウィリアムが杖を出した。

その場に少し緊張感が走ったがフロムはとてもワクワクしていた。


(どんな魔法を見れるんだろう………!)


ウィリアムは咳払いをし杖を食器に向け、息を吸って唱えた。


『フロエル浮遊せよ』


ウィリアムがそう唱えるとテーブルの上にあった食器が全て浮いた。ウィリアムは全ての食器が浮いたのを確認して杖をキッチンのシンクにゆっくりと向けた。それに合わせて食器たちも方向を変え、シンクに向かっていく。


(かっけぇ〜!!!俺も早くあんな風になりたい!)


フロムはウィリアムの背中を見てそう思った。

ウィリアムはシンクに食器を全て開いた後にまた魔法をかけた。


『ルミラ綺麗になれ』


ウィリアムがそう唱えるとシンクにあった多くの食器はたちまち真っ白に綺麗になった。フロムは目を輝かせていた。


「ウィリアム様!俺もあの魔法使いたいです!」


「ふふっ…。フロムはまず基礎魔法を完璧にしようね。」


「………はい。」


フロムは家事全般は得意だが魔法はあまり上手く使えない。基礎魔法の練習中なのだ。


一通り食器を片し、テーブルを綺麗にして二人はまた椅子に座った。たくさんのご馳走があったテーブルはマグカップ二つになった。


「ラズは寝ているのかい?」


「はい。ぐっすり寝ていますよ。」


「そうか。」


ウィリアムとフロムは短い会話だけ済ませてマグカップに手をつけた。マグカップの中身はフロムはコーヒー、ウィリアムはココアである。


突然ウィリアムが話し始めた。


「ラズは偉大な魔女になると思うんだ。だからフロムも手助けをしてやってね。」


フロムはマグカップをテーブルに置き一言だけウィリアムに向けて話した。


「はい。」


ただその一言だけだった。そこから少し沈黙していたがフロムがコーヒーを飲み終わったと同時にフロムはウィリアムに向かって指を刺した。


「ウィリアム様。今すぐに経って後ろを向いてください。」


ウィリアムはなぜそんなことを急に言われたのか分からなかったがフロムの言う通りにイスから立ち後ろ向いた。


その瞬間だった。


バシッッッっと大きな音がしたと思ったらウィリアムが崩れ落ちた。


「痛いじゃないか!!!」


ウィリアムが叫びフロムのことを見るために後ろ向いた。その先には腕を組み額に怒りのマークがついているフロムが経っていた。


ウィリアムは悟った。


(あぁ、これは長い説教の始まりだと………。)


そこからは長い長い説教が始まった。ウィリアムを正座させフロムはウィリアムの前に立ちつらつらとウィリアムに文句を言っていたー


一通りの説教が終わり、身の回りのことを済ませて二人はベットに入った。


「今日はラズが家に来た日だし皆寝よう?」

 

ウィリアムはフロムにそう言った。フロムもたまにはいいかとラズを挟み川の字になるよう寝転び目を閉じた。


(今日はいろんなことがあったなぁ。)


フロムは頭の中で今日あったことを整理していたが段々と眠気が襲い掛かりいつのまにか眠っていた。

ラズと仲良く寝ているフロムを見てウィリアムは今日一番優しい顔をしていた。


「おやすみ。かわいいかわいい僕の宝物。」


ラズとフロムが起きないように小さな声で言った。

ラズが笑った気がしたのを感じながらウィリアムも目を閉じた。


これから賑やかになる生活を想像しながらー


- - - - - - - - - - - - - - - - -- - - - - - - - - - - - - - - -


〜数年後〜


あっという間に時が経ちラズは10歳になっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る