【03】拾われる

村の奥にある赤い花が咲き乱れている崖ー


赤い花はレッドマジックリリーと言う花である。村ではレッドマジックリリーは今まで殺されてきた忌み子たちの涙で育っていると言われている。実際にこの花は季節問わずに、恐ろしいほど咲き乱れているのだ。

そこへ忌み子を連れたシュラフと村長が来た。


「ここはいつ来ても恐ろしいほど美しい…そう、思わぬか?シュラフよ」

「父さんここは美しいなんて生ぬるい表現で表すな。ここは呪われているんだ。父さん"も"分かるだろう?」


「………血は争えぬな。」


「…………。」


シュラフは黙り込んだ。シュラフもまた忌み子の片割れだったのだ。


「着いたな。」


赤く残酷なほど美しい花。そこから下は深く深く続く暗闇。そこに忌み子を落とす。


「さぁ、シュラフよ。忌み子を落としなさい。」

「……あぁ。」


シュラフは一瞬躊躇ったが(ためら)忌み子を崖から落とした。

忌み子を落とし屋敷に帰るときはシュラフも村長も無言だった。シュラフの帰り道に足元を濡らした一粒の滴を村長は見ないふりをしていた。


二人が屋敷に戻る頃にはすっかりあたりは暗くなっていた。


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一方その頃。


先程村にいた青年が忌み子を落とした崖に自ら飛び込んでいた。青年は落下している赤子を魔法で浮遊させ空中でキャッチした。


「あそこの村の大人達は本当に馬鹿だな。ウィンベル様を怒らせるなんて終わったのと同然だ。」


青年はそう呟いた。


「おや、ようやく拾えたかい。フロム。」


「ウィ、ウィンベル様。あ、あはは…。」


「とても可愛らしい赤子だね。目はレッドマジックリリーのように美しい赤だ。そうだね…。名前は“ラズ”にしよう!」


「素敵な名前ですね。」


フロムは先ほどの呟きがウィンベルに聞こえてないと思って安心していた。


「フロム。君はここ何日かあの村で頑張っていたからね。先ほどの呟きは聞こえなかったことにしよう。」


「………すみません。」


神様がそう簡単に聞き逃すわけがないかとフロムは苦笑いをした。


「フロム。」


「はい?なんでしょう?」


「お疲れ様。帰ろうか。」


ウィンベルはフロムに微笑んだ。疲弊しきっているフロムにはとても嬉しい言葉だった。


(俺と同様にこの忌み子、いや"ラズ"も帰る場所がある)


新しい家族が増えたフロムはとても喜んでいた。帰ったら久しぶりにウィリアム様に美味しいご飯を作ろうと心に決めて。


フロムは知らないだろう。

ラズを抱いていたウィリアムが村に冷ややかな目を向けていたことを。フロムが言ったとおりあの村は神様がお怒りになっていることは知らないだろう。



神様だって自らの意志を持ち合わせているのだから。

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