【02】レッドマジックリリー
愚かな大人たちがいつ忌み子を崖から落とすか話していたその時ー
「オギャー、オギャー」
と泣き声が聞こえた。
「泣いている…。」
「セレナはここで寝ているぞ…。」
「……ということは泣いているのは忌み子か?」
泣いていたのは忌み子だった。
普通は泣いている赤子がいたら大人はすぐに駆けつけてあやすのだろう。
ただこの子は忌み子。望まれずに生まれてきた忌み子が泣いている。
大人たちは慌てていた。
「大変…」「どうしましょう……」「嫌だ…」
などとざわざわと話している。
誰かが言った。
「村が滅んでしまったら………」
その一言でざわざわしていた部屋が静まり返った。
ただ聞こえているのは泣き止まない赤子の声だけ。
「今だ…。今すぐに忌み子を神さまにお返ししよう。」
この一言を放ったのは忌み子の父だった。
この言葉に大人は皆賛同していた。
父だけではなく、村の大人たちも忌み子を恐れているからだ。
ただ1人を除いてはーーー
そこからはトントン拍子だった。忌み子は今すぐに神様に返されるものとし、神聖だと言われている白いおくるみを着せられた。額には"赤い"液体で「×」と書かれた。
この赤い液体は、村の奥にある"レッドマジックリリー"と言われる花と忌み子の片割れ"愛される"方の子供の血を混ぜた物である。なぜ、片割れの血を混ぜるのか。それは忌み子の片割れは村に幸せを呼び込むとされているからだ。片割れの血を混ぜることにより、忌み子が村に災いを呼ばないようにするためとされている。
「準備は終わったか?」
「全て終わっております。忌み子におくるみを着させ額にはセレナ様の血も混ぜてある神液しんえきで額に"目印"も描いてあります。」
「準備は整った。では忌み子を神にお返ししてくる。」
忌み子の父と村長は屋敷を出た。
忌み子を殺すために村の奥にある赤い花が咲き誇っている美しい場所に向かっていった。
屋敷に残された大人たちは安心の声をあげていた。
ただ1人の青年だけは忌み子が産まれ家を出るまで一言も声を発さなかった。
(そんなことをしたって決めるのは全て、神なのに…)
青年が心の中で呟いていたことは誰も知らないだろう。
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