玉紫/紫式部(『虞美人草』)
柵に簪見たり房の實が藤尾の鬢へうずもれてゐる
しがらみにかんざしみたりふさのみがふじおのびんへうずもれている
実紫葉陰を掻けばしなだれる我が指先に妖星の群れ
みむらさきはかげをかけばしなだれるわがゆびさきにようせいのむれ
後髪引くごと弛む秀枝より玉紫のみたま零るる
うしろがみひくごとたゆむほつえよりたまむらさきのみたまこぼるる
(「妖星」「藤尾」 夏目漱石『虞美人草』より引用)
【解説】
この三首は、植物の実紫(紫式部)を題材とする。実紫や玉紫とは紫式部の異称。本歌取りではないが、実紫から『虞美人草』の登場人物である藤尾を連想している。物語の筋書きや、私自身の藤尾に対する所感なども投影した。以上の理由より、注釈として稚拙な解説を添える。
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