紅梅・白梅・寒紅梅



路の端にぶちまけられた安物の砂糖もかつては紅梅だつた

ろのはたにぶちまけられたやすもののさとうもかつてはこうばいだった




あはれなる白より淡く白梅の花より出でて匂いだけがふる

あわれなるしろよりあわくはくばいのはなよりいでてにおいだけがふる




寒紅梅胸に詰まりし肺胞の鋭刀で開きてしろしめす恋

かんこうばいむねにつまりしはいほうのないふでひらきてしろしめすこい

(泉鏡花『外科室』  「鋭刀=ナイフ」のルビあり)



【解説】

 寒紅梅 - の短歌についての補足

 この短歌は、泉鏡花「外科室」の本文にある「と見れば雪の寒紅梅、血汐は胸よりつと流れて、……」のくだりを連想したものです。また、歌人の尾崎まゆみ先生の歌集『奇麗な指』に収録された短歌を本歌とします。左記、その短歌の引用を挙げますのでご容赦ください。

 

 (尾崎まゆみ 『奇麗な指』 20ページ「紅梅の腕」)

  白真弓はりつめてゐるわたくしをひらけば梅の花がみっしり

  引用文献 『奇麗な指』 尾崎まゆみ著、砂子屋書房、2013年


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