第2話 魔力覚醒
彼は遠くそびえる教会の尖塔を見上げながら、静かに祈った。
教会の鐘の音が、朝の澄んだ空気の中に優しく響き渡る。
まるでこれから始まる魔力覚醒の儀式への序曲のように。
重たいの扉がきしみ音を立てて開くと、
巨大なステンドグラスから差し込む陽光が、大理石の床に色とりどりの光を投げかけていた。
教会の中は人々の声で賑わっていて、様々な身なりの人々が集まっていた。
レインはリリアの手を握りながら、周りの雑多な群衆に目を走らせた。
日に焼けた顔には緊張の色が濃く浮かんでいる。
そこから少し離れた場所では、着飾った貴族の若者たちが鼻高々と、
双子の姉妹が手を繋ぎ、寄り添いながらお互いに勇気を分け合っている。
商人らしき中年の男たちは、今年の各魔法学院の合格基準について、小声で話し合っていた。
「見て、レイン!」
リリアが兄の袖を軽く引っ張り、教会の前方を指さした。
そこには巨大な水晶の
透き通った水晶の表面には、かすかな銀色の光が揺らめいている。
祭壇の周りでは、色とりどりの魔法界の要人たちが、静かに言葉を交わしていた。
深い藍色の法衣を纏い、銀白色の長い髭を蓄えた老人は、マルス王立魔法学院の教授、ヴィクターだった。
彼は背の高い、
近くには、暗金の甲冑に身を包んだ中年の男性――ウィルソン聖騎士学院のクロード騎士がいた。
無謀な生徒を叱りつけたばかりで、その表情にはまだ厳しさが残っている。
レインは水晶の祭壇のそばに立つソフィア
銀色の髪を高く結い上げた彼女は、穏やかな顔に慈愛に満ちた微笑みを浮かべていた。
その傍らでは、白い法衣を着た若い教会の関係者たちが、魔力覚醒の儀式に必要な器具の準備を進めていた。
光に照らされた金色の
リリアは首を傾げ、教会の美しさに感嘆の声を上げていた。
でもレインの目は、否応なく水晶の祭壇に引き寄せられていった――
そう、あの場所で3年前、彼は人生で最も大きな挫折を味わったのだ。
「第一番目の人、準備を!」
ソフィア司教の声が、レインの思考を中断させた。
周囲のささやき声は一段と大きくなり、緊張と期待が空気を満たしていく。
覚醒の儀式が始まったのだ。
人たちは一人また一人と水晶の祭壇へと向かっていったが、結果のほとんどは失望を誘うものだった。
次に、祭壇に上がったのは、金色の巻き毛を丁寧に後ろに束ねた、豪奢な衣装に身を包んだ少年。
その表情には生まれながらの
エドワードは細い指を上げ、必ず成功するという自信に満ちた眼差しを輝かせた。しかし、その手が水晶に触れた瞬間、かすかな青い光が一瞬だけ漂っただけだった。
一瞬にして、彼の顔から血の気が引いた。唇は震え、それまでの誇りは跡形もなく消え去っていた。よろめきながら祭壇を降りる彼の背中に、父親の失望に満ちた視線が
「Dランク。」
クロード騎士は首を振りながら、名簿にさっと書き込んだ。
その後も続々と現れる受験者たちは、誰一人として水晶から反応を引き出すことができなかった。
ヴィクター教授は疲れた様子で眉間を揉んだ。今年の受験者の質は、特に低いようだった。
十三歳ほどの年頃で、茶色の長い髪は飾り気のない一つ結びにされている。粗末な麻布のドレスには、土の香りがまだ残っていた。
レインはその手に目を留めた――長年の労働が刻んだ硬い皮が、少女の手のひらを覆っていた。
「お名前は?」
ソフィア司教が優しく尋ねる。
「エリス・ミラーと申します。アンデルソン南部から参りました」
少女の声は柔らかいながらも、はっきりとしていた。
水晶の中心から眩いばかりの金色の光が迸り、まるで生命を持つ炎のように踊り出す。
その神々しい輝きに照らされたアリスの穏やかな表情は、
「なんということ!」
グレースが素早く前に詰め寄った。
「これは最も
突然の注目に、エリスは少し怯えたような様子を見せた。顔を僅かに伏せると、長い睫が頬に影を落とす。
レインは彼女の様子を見逃さなかった。スカートの端を強く握りしめる指が、力を込めすぎて白くなっている。
田舎から来たこの少女は、不安を必死に抑えようとしていたのだ。
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