祠へ
1日経って、ボク達3人は祠へと向かった。
「よーし、ほんじゃあまあ、行きますか」
手を組み、腕をうんと伸ばすは、サル。
年中半袖短パンの彼が、珍しくの重装備だ。鎧ほどの頑丈さは無いが、探検、肝試しに行くぐらいならちょうど良いだろう。
「楽しみ。黒き終焉。その実態を俺らが明かすんだゾ!」
そう言って準備体操を始めたのは、ウィザー。
緋色の髪を肩まで伸ばした中性的な少年。一眼見ただけだと女と勘違いしてしまいそうになる彼は、足を伸ばして肩を回していた。
腰に掛けた短剣には独特なエンブレムが刻まれている。彼曰く、「祖父から受け継いだ宝物」らしい。ボク含め誰もその全貌を見たことがない。
「黒き終焉……ねぇ、そんな物騒な。まぁ、怖がらせる為でしょ。そんな化け物何て居るわけないじゃん」
「クラスティアよりも怖い奴いないしね、この辺」
クラスティアは、一言で表すのならキメラだ。
人間の身体をベースに、虎のような巨大な爪、猿のように縦横無尽に動く尻尾、猫のような目を持つ怪物。
ゴブリンやらに比べたら幾分か話が通じるが、奴らの主食は人間だ。抵抗できなければ問答無用で喰い殺される。
「『騎士』の巡回が功を制してるのかな」
「さぁ?」
騎士。正式名称不明の王都直属の治安部隊。
元の世界で言う、警察に近しいものだ。
王都の方にはドラゴンが居るとか。
見たことないけど。
「さ、お前ら無駄話はそこまで! 懐中電灯は持ったな? 丸太は持ったな?」
準備体操が終わったのか、ライトを突き上げた。祠は外から見ても灯りが一切ない。
どれぐらい続いているのか一切不明だった。
「よろしい。行くぞぉ!!」
返答を待たず、第一番に突入していった。
「お、ちょーま」
「ボク達も行こ」
「はぁ……ま、いっか」
後を追う形で、ボクとウィザーも入った。
「うーわ、暗っ」
やはりと言うか、暗かった。
ライトを付けなきゃ……付けても十歩先すら見えない。冷たい石の壁を辿って奥へと進む。
「ウィザーいる?」
「いるゾ。それとも、逸れたほうが良かった?」
声しか聞こえない。
音の発生源を目線だけで覗く。背中を触られている感覚が頼もしいような気持ち悪いような。
「そんなわけ無いだろ。つか、サルは?」
突っ走ってったアイツはどうなったのだろう。
「さぁ?」
その刹那、
「うぉぉぉぉぉあああああ!!」
前方からサルの叫び声が聞こえた。
普段ですらうるさいのに、洞窟内だから更に声が反響している。
「「!?」」
その瞬間、背中を押していた手が離れた。
無意識でピタリと足を止めた。
それが、結果的には正解だった。
「ァァァァァァァァァァァァア!!」
後方、左側からウィザーの叫び声が聞こえた。
サルに劣らない声量で耳が痛くなる。
(何が……何が起きた!?)
さらにその瞬間、懐中電灯が壊れた。
チチチと小さなスパークを起こし、爆発した。
「サル!! ウィザー!!」
名前を叫ぶ。どこにいる!?
返答は無い。1分経って返答が無い。
(どうする!? 動くか!? どっちに……?)
サルに? ウィザーに?
どっちも正確な場所は分からない。
(クソ! あぁもう!)
頭よりも身体を優先した。足を動かせ。腕を触れ。兎に角、奥へ。
もう頭は回っていない。冷静な判断なんてできなかった。
「サル!!」
そこにいるは、巨大な機械だった。
10メートルはあるだろうか。
何十、何千、何万といった鉄パイプや金属板が大雑把に連なって人型を保っている。
胸元と瞳の位置にある巨大な水晶玉はギロリと足元の人間を覗いていた。
「サ……ル」
血塗れで、今にも押しつぶされそうな友達の姿だった。
「ァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
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