一章 魔剣と王国

プロローグ─偽─


この世の摂理は、誰が決めた?

我は神。我は世界。我は最強。

空想の破壊者であり、虚栄の理解者である。

ダレが、決めタ? ダレが、与えタ?

違う。違う。違う。

我ガ力は、我が決めル。


「──を、げろ!」

それが、『ボク』を終わらせた。

たった一瞬、瞬きの方が長い。

「グ!」

攻撃、と呼ぶことすら憚られるそれに、彼はなす術もなく

ぐちゃり、ぐちゃり。

弾け飛ぶ肉片、軋み歪む肋骨。

「あああああああああ!!」

人の形を失いながらも、魂は、命はまだ、人でいた。それが、どれだけ辛いことなのか。

ボクには想像できなかった。

昔読んだ新聞に、『死』についての記事があった。その記事は『人間が死ぬ瞬間の脳の働き』

死の瞬間、脳は大量のドーパミンを放出すると言う。その量は、死の痛みすら上回るほどだそう。

うろ覚えだから、この先は覚えていない。

理屈なんて覚えていない。ただ、有ると言う事実だけだ。

「な    で」

断片的に聞こえる悲鳴。泣き叫びたくなる地獄。屍山血河の詩が、ボクを呼んでいた。

俺の屍を越えてゆけ。そう言われても人間、実際に行動に移すのは難しい。

「っんで!」

祠の出口で彼は待つ。

虚な目に、の彼が。

紫色をした、巨大な目が、ギョロリと、

「何でだ!」

ボクを睨んだ。

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