第47話 八日目 八月六日 一二時〇〇分(――:――:――)
オレは英里らから受け取ったポイントと貯めていたポイントを使い、ゼノゾンでスキルを強化した。
ギフト 【刃の祝福】
スキル 【俊足Lv9】→【
カーズ 【レンの呪い】
これに加え、刀の
綾、誠也、騎士、理乃らも、スキルと武器の強化や購入をしていたが、中身については聞いていない。スキルとギフトは過ごしてきた人生と性格を反映したものなので、他人に知られたくない。それは綾らも同様だろうと思ったからだ。
大人たちは自衛隊の指揮のもと、九弦学園高校を要塞化した。
迎え撃つ準備は万端だというのに、最終試験が開始されて一週間経っても虐殺蜂が攻め込んでくる気配は無かった。
自衛隊が二四時間体制で監視する
また警察の協力のもと、食料調達を担う虐殺蜂を追跡し、千葉県内に点在するほぼ全ての虐殺蜂の巣を発見。犠牲者を出しながらもいくつかの巣を壊滅させることに成功していた。
飛行する成虫を
順調だった。人間側に優位なまま状況が推移していた。それが恐ろしくてならなかった。幸運や平穏は長くは続かないというのがオレの人生観だったからだ。
「も、燃やそう……」
だからオレは、定期報告会議でそう提案した。九弦学園高校の校長室で行われるこの会議は、学園の代表として
「ガ、ガソリンをブチ
ダメだった。話しだしたら、とっくに限界を迎えていたオレの理性はどこかへと消し飛んでしまった。
「……あれ? センパイくん壊れちゃった? よしよーし、こっちにおいでー」
綾に頭を撫で撫でされる。
「こ、怖い、平穏が怖い……何もない日常が怖い……。まだ始まらないのか? 血と、痛みと、命を懸ける闘争の時間はっ!」
「戦争帰りの兵士みたいなことを……生田先生、これ注射で治る?」
「心の病は専門外なのですが……鎮静剤でも打っておきますか?」
「や、止めろ! オレはまだ正常だ!」
オレは医療器具を詰めた鞄から、注射器を取り出そうとする賢治から逃げる。
「実際に、そういう話は出ている」
忠伸はオレ達のやり取りなど意に介さず、ソファーに深く腰掛けている。
「ガソリンを大量に積載できる車両を手配できないか、確認中だ」
「ほ、本当かっ! やろう、今すぐやろう! 奴らを跡形もなく焼き尽くすんだっ!」
「先生、ボクが腕を押さえておくから、この人を静かにさせて」
「や、やめろ! ……え、ホントに動けん」
綾に組み伏せられ寝技をかけられると、オレはその状態から全く身動きが取れなくなった。
「ふむ……しかしそんな事をして大丈夫なのですか?」
義円がオレたちを視界にも入れず疑念を口にすると、行人が苦々しい顔をしながら口を開く。
「できるのですよ。残念ながら虐殺蜂・クイーンの巣の周辺には、誰一人として残っていないのです」
「ああ……」
苦悶のような声を漏らし義円は顔を
「だから…………なんだ?」
忠伸が左手から【黒のスマホ】を取り出す。体内に収納できる【黒のスマホ】が直接手の平から出てくるのも見慣れた光景だ。そしてほぼ同時に行人のスマホにも連絡が来る。
「どうした? ……ああ、そうか。対応する」
忠伸が通話を切り、皆を見渡す。
「動き出しました。巣から大量の虐殺蜂が飛び立ったようです」
「こちらも同様です」
自衛隊と警察の監視範囲は異なるが、同じ行動が広域で起こっているようだ。
「目指しているのは、当然ここか」
義円が言い、ビアンカを見遣る。ビアンカを殺害すれば虐殺蜂の勝利は確定し、奴らの食料問題も解決するのだろう。
「間違いなくこれが、虐殺蜂のラスト・アタックです」
断定する賢治に、全員が静かに頷く。
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