第17話 最終日 七月二〇日 一〇時一七分(00:01:43)
あと二時間足らずで、第一次試験のタイムアップを迎える。
【黒のスマホ】が示す試験内容は
人間側の被害が五三万九九二三人なのに対し、虐殺蜂はたったの四三二体。本当にそれほどの人間が殺されたのが俄かに信じられないが、数字上、敗北は決定的だった。
だからといって生徒と保護者からなる
昨晩オレは図書室で眠ったが、綾とアンジェリカは体育館に戻った。一晩を体育館で過ごし、
「なんで皆、あんなにワガママなの? そういう状況? 大人なのに何してるの? ねえセンパイくん、ちゃんと聞いてる?」
「お、おお……聞いてる聞いてる」
綾の愚痴が止まらない。よくそんなに怒れるな。迷惑だから帰ってくんねえかな。オレは内心でため息をつきながら窓の外を見やる。
「……おい」
「大体、叔父さんも叔父さんだよ。ああいうのを一々相手に、」
「おいって」
「え、なに?」
人の話を聞いてない綾の肩を突付く。
「警察だ」
校庭にパトカーが入ってきた。
「わ、ホントだ」
パトカーの後ろについているのは、コンビニの配送車か? だがペイントされたロゴがバラバラで、それぞれ異なる会社の車が三台。食料でも配っているのだろうか?
パトカーが停車する。校庭には何十台もの車が駐車されていて、体育館まで車を寄せることができない。
虐殺蜂が体育館の外壁から離れ、パトカーへと集まる。さて、どうなるか――と固唾を飲んで見守っていると、虐殺蜂が弾けた。
破裂音が
配送車の積み下ろし用の後部ドアから何人もの男が降りてきて、まだ息のある虐殺蜂を棒のようなもので叩き止めを差す。死骸はきっちりと【黒のスマホ】で撮影していた。
手慣れている。だが、
「警察じゃないな」
「……だね」
パトカーや配送車から降りてきたのは全員男。そのうち一人として警察の制服を着ておらず、GパンにTシャツ、または灰色の作業着のような服装だった。
数は一七人。二列になって虐殺蜂を射撃しつつ体育館へ進んでいく。どうにも怪しい集団だった。
「あっ!」
体育館から駆け寄ってきた女を、先頭の男が殴った。確か野上英里とかいう避難者のリーダーだった女だ。
「敵だな」
「友好的……とはとても言えないね」
オレは綾と目配せし、図書室を出る。
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