Episode 13 その頃の白瀬茜
《SIDE ; 白瀬茜》
ーー同刻、キルス王城
私は伊吹の幼馴染、白瀬茜。
異世界の勇者として、キルス王国にクラスメイトと共に召喚された。
クラスメイトの中には幼馴染の伊吹もいたが、
ステータスがないというだけで追放されてしまった。
そしてその息吹を追放した憎きやつが今私の前にいる。
「諸悪の根源である魔王が、ここから離れた遺跡『古竜の・・・・・・・を潰してもらいたいのです」
この王女とやらの長い話も聞き飽きてうんざりする。悲しそうな顔も作り物のように見えてしまう。
召喚されて意味わからないことを話し始めたところからわけわからなかったが、別に嫌悪感はなかった。
だが、私がこいつに嫌悪感を抱いたのはあの時。
そう、伊吹に追放を言い渡した時だ。
意味が分からない。
伊吹は凄くて、なんでもできて、優しい人なのに。
ステータスとやらがないだけで追放をするなんて……
私は神官の鑑定を受けて、【聖女】だと分かった。
聖女である以上、いろいろな仕事を与えられた。
怪我をした人たちの治療はもちろんのこと、それを1日に何十、何百人と診る。
さらには、緊急治療係として御剣などの戦闘員と共に魔物と戦いに行かされたこともある。
さて、王女の言っている『古竜の巣』とやらも、
私は行かなければならないだろう。
魔王の大事にしている場所だから壊さなきゃいけないという思考自体理解できないものの、従うしかないだろう。
「分かりました、絶対に『古竜の巣』とやらを破壊します!」
クラスの中心人物、御剣優弥が声を上げた。
すると、すぐにクラス全体から彼に賛成する意見が上がる。
彼は悪い人物ではないが、いささか自分が信じたものを、信じすぎる。
例えばこの国の第二王女であるミーシャだが、
彼は彼女のことを、懸命に頑張る王女様、のように見ているが、私から見るとあの王女はどうもそれだけではない気がする。
言い方を変えれば、ミーシャは裏が黒そうだ、ということ。女の勘、というやつだろうか。
私自身よく分からないが。
彼の言葉を聞いたミーシャは、
喜びを感じ、にこやかに微笑んだような顔をしている。
でも私にはどうも作り物にしか見えない。
はあ、私もちょっと働きすぎかな。
信じすぎるのも良くないけど、疑いすぎるのはもっと良くない。少し反省しないと。
それに私もいつまでもこんな城に閉じこもっているわけにはいかない。
必ず、伊吹とまた会って地球に戻ってあの幸せな日々を取り戻さないと!
古竜の巣に行くのもなにかのヒントになるかもしれないし、一応行ってみるか……
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