Episode 6 喧嘩をふっかけられた件


 ちなみに、B級依頼であった『シグナの森にいる謎の魔物探索!討伐したら追加報酬あり!!』はシェネルのことだった。


 紫に変色しドロドロになった地面を見た人が、

何かの魔物のせいだと判断し冒険者ギルドに依頼を出したらしい。


 討伐はしていないが、問題を無事解決したということで、依頼は達成したということになった。


 依頼報酬として100ニテルを手に入れた。

『ニテル』というのはこちらの世界の通貨単位で、

だいたい1ニテル=100円になるので、今回の依頼で約1万円を手にしたことになる。


 命をかける仕事にしては安い気もするが、

こっちは物価も安いのでまあ大丈夫だろう。



「さて、今日は何をするかな」

「これはどうだ?面白そうだぞ」


 キルス王都支部冒険者ギルドのリクエストボードの前に立ち、依頼を吟味する1人の男と、1人の少女。


 俺ことイブキ・フジワラと、古竜の姫ことシェネル・ドラグーンだ。


 シェネルがすることがなくて暇だと言うので、

冒険者ギルドに連れてきた。聞くとシェネルはだいぶ強いらしいので、魔物との戦闘になったら役に立つかもしれないと期待している。


 2人で楽しく冒険者をやっていこうというところだったのだが……


「あ、なんだお前、見ない顔だな。

ちょっと俺様たち『暴炎の矢』が依頼を見るんだからどけよ」


 いきなり話しかけきた大柄なスキンヘッドのガラの悪い男は、後ろに何人か仲間を引き連れ、

圧をかけてくる。


 どうしようか、対応に困っていたところ、

シェネルが先に言葉を発した。


「あ?なんだ貴様は?」


 キレてる…めっちゃキレてる。


「チッ、ザコのくせに幼女連れてギルドにきて気持ち悪いなぁ。あ?」


 はぁ、俺もだんだんムカついてきたぞこいつ。


 初対面でザコ呼ばわりされ、シェネルを幼女と呼びまるで俺がロリコンかのように……


「無視してんじゃねえよ、テメェ!

いいだろう、やってやろうじゃねえか。

俺様と決闘しろ!俺が勝ったらその女を寄越せ」


「俺になんのメリットがあってそんなことをしなきゃいけない?」


 決闘なんてするわけないだろう。

ムカつくけど、今は我慢しよう。


「妾のことなどいい!イブキなら勝てる!

やってやれ、こいつをボコボコにするんだ!」


「ふっ、こいつも言ってるぜ。

ザコって言われたくないならやってみろよ」


 男は勝ちを確信しているかのような顔をしている。俺のことを本気でザコだと思って、

自らの敗北を微塵も考えていない。


 シェネルもシェネルだが、

まあ応援してくれているのだろう。



 まあ、ここまできたんだ。やるしかないだろう。

喧嘩をふっかけてきたのも向こう、

俺達を馬鹿にしてきたのも向こう、

決闘を申し込んできたのも向こう。


 これで、黙って帰ってやるほうがおかしいんじゃないかってくらい理不尽な状況だ。


 ならちょっとくらい喧嘩したって良いだろう。


「いいだろう、やってやるよ」



 そうして、

 

 B級冒険者ムーノ

      VS

   C級冒険者イブキ


 の決闘が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る