Episode 4 古竜の姫 前編



 俺はさっそくC級冒険者なので、いろんな依頼を受けられる。リクエストボードを見ていると、面白そうな依頼があった。


『シグナの森にいる謎の魔物探索!討伐したら追加報酬あり!!』


 謎の魔物か。

Bランクの依頼だから強そうだけど、やってみる価値はある。


 まずは、剣や防具、地図、水筒など必要な道具をある程度買い揃えた。


 追放してきたミーシャにも多少の慈悲はあったのか、幾らかの金を渡してくれたので、それを使った。


 シグナの森はキルス王都から冒険者の足で歩いて1時間ほどの場所にある。


 道中では見慣れない植物や動物がたくさんいたが、とりあえず全部スルーだ。



 シグナの森に着くと、唐突になにか声が聞こえてきた。


「・・・助けてくれ〜、誰か〜」


 か細い声で、どこか遠くから呼んでいるのが分かる。女性の声だ。


 俺の目的は謎の魔物だが、

この声の主がその魔物に襲われているなんてこともあるかもしれない。


 声の方へ向かって行くと、妙に地面が毒々しい紫っぽく染まっている。


 土が紫に染まりドロっとしている。

ぬかるみに足を取られないよう気をつけながら、

どんどん奥の方に進んでいくと、さっきの声の正体が明らかになった。


 白い半透明の球体の中に一人の少女が入っている。紫の沼の中心に陣取っているが、この子がこの沼の原因なのだろうか。


 だとしたらさっきの助けてという声は?

謎の魔物の正体とはこの子のことなのか?


「大丈夫かい?」


 分からないので、とりあえず球体の中にいる少女に話しかけるが、反応がない。


 顔を見ると、目を瞑っている。

寝ているのだろうか。


 とりあえずこのままでは俺もこのぬかるみに足を取られそうなので、少女を閉じ込めている球体の破壊を試みることにした。


 この少女が敵ならそれはそれで、戦おう。


 実際自分の強さがどんなもんかは分からないが、

『勇者一行』として召喚されたんだ。雑魚では無いことを願いたい。


「ハァッ!」


 ぬかるみを蹴り、高く飛び上がってから剣を真上から球体に突き刺す。


 キーン、という金属音が響くが、

球体は壊れない。


 ある程度足を動かし続ければ、足がぬかるみに沈むことはない。適度にステップを踏みながら剣を使って球体への攻撃を続ける。


 キーン、キーン、キーン。

シグナの森に甲高い金属音が鳴り続ける。


 そして、ついに球体にヒビが入って一際大きな音が鳴った瞬間。囚われている少女の目が開いた。


 金色の美しい目をしている。銀の髪も相まって美しさが際立っている。


 ヒビが入ったことをきっかけに、白い半透明の球体は徐々にその綺麗な球体の形状を失っていく。


 ガラスのように飛び散るわけでもなく、

ヒビを中心に消えていくような感じだ。


 そして、ついに中にいた少女が外に出てきた。



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