Episode 3 冒険者ギルドへ
追放された俺ことイブキ・フジワラは地球に戻るための旅を始めた。
と言っても、せっかく異世界に来れたわけだし、こっちの世界も楽しみたい。
ラノベとかとほとんど同じなのだとしたら、
ダンジョンや冒険者、魔物とかもいるかもしれないな。
俺的には冒険者をやりたいと思っている。
なぜなら……異世界と言えば冒険者だからな。
依頼を受けてドラゴンを討伐したり、
伝説の獣フェンリルを部下にしてみたり、
魔王と戦って撃ち倒したり。
やってみたいことはたくさんある。
追放された王城を出て、しばらくすると街が広がっていた。
王城すぐ近くには貴族街のようなものが広がっていたが、ここまでくるとそこらへんにいるのも普通の町人のようだ。
「冒険者ってありますか〜?」
ちょうどすれ違いそうになった人に声をかけてみる。
「冒険者ギルドのことかい?
俺も今から行くところだったんだ、連れて行ってあげるよ」
話しかけた気の良さそうなおっさんも冒険者だったらしい。
たしかに、冒険者と言われても違和感のない強そうなガタイをしている。
「ありがとうございます。」
この男を見て気づいた。
この男だけじゃない、街の中全ての人間の体がでかい。
太っているのではない。筋肉が多いのだ。
きっと地球とは違う、全手動の生活故だろう。
「兄ちゃんはどこから来たんだ?
その服とか黒髪黒目を見るに、東方から………」
それに、ちょうどこの男が言っているように黒髪黒目の人間は珍しい。
「おい、待て。そういえば最近聞いたぞ。
こんど異世界から勇者を召喚するみたいな話。
兄ちゃんってもしかして……」
めんどくさそうなことになったな。
とりあえず、さっきこの人が言おうとしていた、東方からってことにすればいいか。
「いや、俺はそんな人間じゃない。
あんたの言う通り、東方から最近こっちにきたものでな」
誤魔化したけど嘘はついていない。
追放されたから勇者じゃないし、
日本だって地球だと東国なはずだしな。
「そうか、兄ちゃんがそういうならそういうことにしとくよ」
誤魔化せたのかは分からないが、
良い人そうで良かった。
もしバレていたとしても、この人なら他の人に言いふらしたりはしないような雰囲気だった。
「助かります」
それからはしばらく無言の時が続いたが、
数分もするとすぐに冒険者ギルドらしい建物が見えてきた。
この世界のことなど何も知らない俺でも一目で冒険者ギルドだと分かったのか。
それは建物の主張が激しいからだ。
剣と盾の看板に、建物あたりに群がるガラの悪い連中。
ここが地球だったらヤクザのアジトにしか見えないな……
「あそこがキルス王都支部冒険者ギルドだ」
ギルドに入ると、いろんな冒険者の視線が集まる。なれない顔だからだろうか。
日本人の感覚でいうとガラの悪そうな連中だが、
悪い人たちではなさそうだ。
こちらを見る視線に悪意がないことから分かる。
「あの、冒険者登録をしたいのですが」
勇気を持って、受付嬢へと話しかけた。
「かしこまりました、ではこちらにご記入お願いします」
受付嬢は穏やかに微笑み、
羽ペンと紙を渡してきた。
あんまり俺はこういうことを考えるタチではないものの、この世界の人は美形が多いと思う。
この受付嬢然り、第二王女ミーシャ然り。
渡された紙には名前、HP、 MP、 俊敏、などなど。ステータスがないと見れないような項目がずらっと。
ステータスがないんです!なんて言ってもまずいことになりそうだ。なぜならそれが理由で追放されたんだからな。
ミーシャがクラスメイトに説明していたのを思い出しながら、平均値である10〜20程度に書いておいた。
-----------
名 イブキ・フジワラ
齢 17
性 男
HP 13
MP 15
体力 17
力 11
俊敏 19
-----------
いろんな情報抜き取るんだなぁなんて思いつつも、全部嘘だしいいかと納得する。
書き終わった紙を受付嬢に返却をすると、
受付嬢が目を丸くして小さめの声で聞いてきた。
「姓をお持ちということは、どこかの貴族の方ですか?」
なるほど。
こちらの世界では家名を持っている人は貴族とか王族だけなのか。
今も斜め後ろで見守ってくれてる男には東方の生まれって設定だし、東方の端くれの下級貴族の末子ってことにでもするか。
それならちょっとくらい旅に出ててもおかしくはないんじゃないだろうか。
「実は、東方の下級貴族の末子なんです」
俺が小声で返すと受付嬢は納得するような表情を見せ、すぐにまた営業スマイルに戻った。
「なるほど、では貴族階級の方はCランクからのスタートになります」
今度は普通の声のボリュームに戻り、会話が再開された。
Cランクか。
ここの世界での冒険者の仕組みとかもよくわからないから聞いておこう。
地球のラノベとは少し違うかもしれないしな。
それにしても、なんの証拠もなしに貴族階級と信じていいのだろうか。名字を名乗るという行為自体が庶民には想像もつかない、という世界ならそれも納得できるか。
「最近、こっちにきたばっかりで冒険者についてもよく分からないので、説明をお願いしてもいいですか?」
「もちろんです」
そうして、受付嬢による冒険者についての説明が始まった。
冒険者のランクは8つに分けられる。
SSS, SS, S, A, B, C, D, E で、普通はEから始まるが、貴族階級はCから始まるということらしい。
冒険者は毎日リクエストボードに張り出される依頼をクリアすることで、報酬がもらえたり、
何度も依頼をクリアすることでランクが上がったりする。
依頼も同様8つのランクに分けられており、
冒険者は自分のランクか一つ上のランクの依頼を受けることができる。
依頼の達成証明についてだが、
魔物討伐系依頼は指定された部位を切り取って受付に提出する。
薬草など採取系も当然だが、採取したものを受付に提出する。
何人かでチームを組んでパーティというものを作ることもできる。パーティ内での報酬分配など揉め事についてはギルドは一切関与しない。
などなど。
今日受付嬢に聞いたのはこの程度になる。
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