第2話 平等の理想と現実

「平等」と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは、全ての人が同じように扱われる世界です。国籍や性別、年齢に関係なく、誰もが同じ機会を得て、同じように評価される――それが理想的な平等の姿だとされます。しかし、その「理想」と「現実」の間には、深い溝が横たわっていることを忘れてはいけません。


現実の社会では、人々は様々な違いを抱えています。能力、家庭環境、健康状態、経済力……これらの違いは、生まれながらにして存在するものもあれば、人生の中で培われたものもあります。これらを全て無視して「平等に扱う」というのは、一見正しいように思えますが、実際にはその違いを見落としてしまうことになりかねません。


例えば、教育の場で考えてみましょう。全ての子どもに同じ教材を与え、同じペースで授業を進めることが平等だとされる場合があります。しかし、学びの速度や得意な分野は一人ひとり異なります。これを無視して同じ基準を押し付けると、結果として一部の子どもたちが取り残されることになります。これは「平等」の名の下に行われた「不平等」と言えるのではないでしょうか。


また、職場でも同じです。「平等」を重視して、全員に同じ条件で仕事を割り振ったとします。体力が必要な作業を苦手とする人や、特定の分野に専門性を持つ人にとっては、その「平等」がかえって負担や不公平感を生むことがあります。ここでも、違いを無視した「平等」は本当の平等ではないのです。


理想的な平等とは、全員を同じように扱うことではなく、全員がその人なりの能力や環境の中で最大限の可能性を発揮できるようにすることだと思います。それは「公平」とも呼ばれるかもしれません。違いを認め、それに応じた配慮を行うことで初めて、真の意味での平等が実現するのではないでしょうか。


私たちは「平等」という言葉を掲げるとき、それが理想を追い求める姿勢であることを忘れてはいけません。そして、その理想に近づくためには、現実の違いに目を向け、そこにある不公平さを理解しようとする努力が必要なのです。理想に固執するあまり現実を見失うのではなく、現実を認めた上で理想に一歩ずつ進む。それが私たちに求められる姿勢ではないでしょうか。

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