再会は必然で

再会は必然で➀

 父親から薬を受け取り、帰りに行きつけの寿司屋で夕食を済ませ帰宅した。


「あぁ~明日から実務修習かぁ」


 スケジュール帳を開き予定を再確認すると、明日から司法修習生の実務修習の指導検察官の職務が追加されることになっている。

 担当する案件を処理するだけでも時間が足りないというのに、ノートパソコンの電源を入れ、大きな溜息が漏れ出した。


 受信メールを確認する。

 5年ほど前から、13年前に失踪した彼女の行方を友人の調査会社に依頼している。

 定期的な報告は勿論のこと、自身で調べて得た情報のやり取りも逐一行って来たが、未だ有力な情報は掴めていない。


***


 シャワーを浴び終え、髪をタオルドライしていると、インターホンが鳴った。こんな時間に誰だろう?

 姉や両親からの連絡はないし、デリバリーや宅配も頼んでいないから、来客の予定はないのだが。


「ん?……えっ?」


 インターホンのモニターに来栖 湊が映し出されている。しかも、病衣のまま雨でずぶ濡れになった状態で。


「今開ける」


 病院にいるはずの彼女が、一体何故ここにいるのか。

 病衣のままだから、病院を抜け出したのは安易に想像がつくが、何故傘も差さずに……?


 インターホンのパネルでエントランス解除のボタンを押し、マンション内に入れるようにした俺は、慌てて部屋を飛び出した。


 エレベーターは2基あり、すぐさま両方の【▽】ボタンを押す。

 稼働表示を確認すると、下から1基上がって来る。

 もう一つの方で降りたらすれ違いになるかと思い、上がって来るエレベーターを待っていると。


 静かに開いたドアの先に彼女がいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る