再会は必然で②

「何かあったの?」


 思わず声が漏れ出した。

 顔面蒼白の彼女は、正気を失ったかのような表情でエレベーターを降りた。


「とりあえず、部屋に」


 立っていることさえすでに限界のような彼女の肩を支え、自宅へと連れてゆく。


 無言のまま、息をしているのかも疑わしいほどに微動だにしない彼女。

 一体何が彼女をこんな風にさせてしまったのか、全く見当もつかない。


 洗面室に彼女を連れて行き、素早く浴槽に湯を張る。


「ちょっと待ってて」


 パニック状態に陥る俺だがとにかく着替えを用意しないと、と慌てて寝室へと向かう。

 寝室のクローゼットから長袖のTシャツとハーフパンツを手にして彼女のもとへ急いで舞い戻る。


「これ、ウエスト部分が紐で結べるから」


 サイズが合わないのは仕方ない。女性用のものなんてこの家には無いんだから。


「風邪ひくよ、湯に浸かって温まって」

「……」


 反応がない。うんともすんとも言わず、こくりと頷くこともしない。


「リビングにいるから」


 呆然と立ち尽くす彼女の顔を覗き込み、声を掛ける。

 1人にさせるのは心配なところだが、さすがに風呂に入れてあげるわけにもいかない。何とか1人で入れるだろうと思い、その場を後にした。


 リビングテーブルの上に置かれたスマホで、俺は父親に連絡を入れる。案の定、病院内は彼女がいなくなって騒動になっていた。


 とりあえず、父親を通して彼女の事務所へ俺の自宅にいることを伝えて貰うことにした。すると、すぐさま事務所の社長から電話がかかって来た。


 彼女を心配して、狼狽えているのが電話越しでも分かる。

 けれど、すぐさま迎えに来るのかと思いきや、返って来た言葉は『どうか、湊を宜しくお願いします』と。

……どういう事だ?

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