蘇った記憶と対価④
「そういう久我さんは、何で検事に?法曹関係の家系とか?」
「いや、全然。祖父も父親も、姉夫婦も医者だよ」
「え?……じゃあ、何で検事に?」
友人や知人にもよく言われる。
それこそ小学校に入る前くらいの時は、親の背中を見て育った分、医師になるものだと疑いもしなかった。
あの事件さえなければ、確実に医師になっていただろうな。
15年前。
当時13歳の俺は中学に入ったばかりで、公立の中学校に進学した美雨ちゃんと別れ、私立の中学に進学した。
別々の中学校に進学したとはいえ、家は目と鼻の先ほど近く、よく一緒に勉強をするほど仲が良かった。
付き合ってはいなかったが、友達の少ない俺にとって、彼女は唯一の友人だった。
そんなある日。
彼女の自宅が火事に遭い、ご両親の遺体だけが発見された。
しかも、刺殺された痕があると、その当時テレビや週刊誌などで毎日のように話題になったほどだ。
毎日のように取り上げられるのにもかかわらず、彼女は消えたまま。
街の至る所に彼女の貼り紙がしてあったのに、15年経った今でも行方不明のままだ。
誰かが連れ去ったのか。
犯人から逃げるために姿を消したのか。
もしかしら、両親が殺される現場を見てしまい、どこかに消えてしまったのか。
毎日のように彼女の無事を祈りつつ、いつかまた会える日を願う事しか出来ずにいる。
そんな自分に出来ることを考えた結果。
刑事になって自ら調べるのが手っ取り早いと思ったが、過去の資料を自由に閲覧出来るのは限られた人間のみ。
ならば、もっと優位な立場になればと思ったのが検事になるきっかけ。
「とある事件の被害者を探すため……かな」
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