偶然が二度目なら…⑩
新商品、季節限定、先着、こういう類の言葉に私は凄く弱い。
特に甘く蕩けるようなものには目がなく、一日の疲れも一瞬で吹き飛ぶ魔法のアイテムだと思っている。
カフェの新商品『キャラメルナッツショコララテ』というフラッグにハートを射抜かれた私は、今から仕事が終わるのが待ち遠しくなった。
周りの視線を気にしつつ、マネージャーの山ちゃんと足早に控室へと向かっていて、とあるショップを横切ろうとした、その時。
「ん?」
「みーな、どうかした?」
スポーツ専門店で見たことのある人を見かけたような……。
「何でもない」
別に彼が買い物をしていてもおかしくない。
一瞬、横顔が久我検事に見えただけ。
ただ、スーツ姿のイメージしか湧かないから、ビビットなカラーのジャージを見ているのが、ちょっと気になっただけ。
季節的に夏向けの、海外ブランドのスポーツウェアが沢山陳列され、黄色やオレンジ、水色といった色目の商品が特に目を惹いた。
今年のトレンドカラーなのかな?そんなことを思いながら、その場を後にする。
***
ショッピングモールの広告塔として契約している私は年に数回、こうして商戦期にイベントをこなす。
時には、ドラマでショップ店員の役をしたら、そのドラマの衣装でイベントをこなすこともある。
有難いことに専属契約は今年で5年目を迎えた。
見慣れたスタッフと共に順調にトークショーをこなし、その後で抽選30人限定のサイン会もこなして――――。
「お疲れ様でした~」
「今日も有難うございました」
イベント責任者の及川さんと握手して、その場を後にする。
会場にいたファンの方々に手を振り会釈して、笑顔で控室へと。
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