偶然が二度目なら…④

『深夜に申し訳ない。動画の件だが、こちらの方で既に削除してあるのでご報告を。既に閲覧された分はどうにもならないが、投稿者のアカウントも凍結してあります。あまり深刻に考えず、ゆっくり休んで』


 皆川にメールを送信した後、俺は来栖 湊へメールを送信した。

 削除した事を知らずに、気を揉んでいたら可哀そうだと思って。


 髪を乾かし終え、ベッドに潜り込む。

 まだ3時間寝れる。部屋の明かりを落とし、再び眠りにつく。


 翌朝、目覚めると来栖 湊からメールが届いていた。


『お手数お掛け致しました。本当に感謝してもしきれないほどです。有難うございました。何か私に出来ることがあったら、いつでも遠慮なく仰って下さいね』


 社交辞令口調ではあるが、誠意は伝わる。

 殆どドラマや映画は観ないから、先入観に捕らわれることもない。

 あの一件が落ち着けば、もう接点もないし、連絡を取り合うこともないだろう。


 住む世界が違う人同士、やり取りするのはこれが最後だと、そう思った。


***


 とある日の早朝。出勤準備をしていると、母親から電話がかかって来た。


「――――今夜19時にモール内の『S&L』というカフェだからね」

「はいはい、分かったよ。行けばいいんだろ、行けば」

「言っとくけど、この間みたいに男性同伴しても無駄よ」

「……はいはい」

「レストランとか料亭を避けてあげただけ、有難いと思いなさいよ?」

「あぁ~~ハイハイ」

「どんな子でもいいのよ、心から本気で愛せる子なら」

「分かってるって。仕事に遅れるからもう切るよ」


 母親からの見合い話で、早朝から気分が最悪だ。

 親の期待を裏切り、『検事』という職業に就いている俺は、親からの圧力に押され気味。

 まだ27歳という年齢なのもあって、結婚を考えてはいないのだが、両親からしたら『検事』という危険な仕事をさせるのは忍びないらしい。

 担当した事件の被告人が、いつ報復して来るかわからないし、恨みを買うことは日常茶飯事だから……。

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