偶然が二度目なら…⑤

 久我検事に謝罪のメールを入れた後、湊はドラマの台本に目を通していると、深夜にも関わらずメールを受信。

 事務所スタッフからの連絡かと思いきや、送り主は『久我検事』とある。

 すぐさまメールを開いて確認すると、『動画サイトの件は処理した』という内容。


 大手芸能事務所でも四苦八苦する案件なのに、一体どうやったら小一時間ほどで削除することが出来たのだろうか?

 検事だから?何か奥の手でも使ったのだろうか?

 だとすると、返ってますます迷惑をかけてしまったことになる。


 深夜3時半過ぎ。

 もう少ししたら、薄っすらと空が明るくなるような時間帯に『どうやって?』なんて聞けるはずもなく。

 胸がざわつくのに解決する方法すらなく、ただ時間が経つのを待つしかない。


 寝ないといけないのに、とても寝れるような心境でもなく。かといって、台本を手にしてもセリフが頭に入るとも思えない。


 湊はソファに横たわり、呆然と天井を見つめた。


***


久我は週末が近づくと憂鬱になり、スマホの電源を落としたくなる。30歳が近づくにつれ、親からの結婚催促が急加速して来た。

 別にどこかの令嬢との縁談を……みたいな堅苦しい家柄ではないが、早く落ち着かせたいようで頻繁に見合い話を持ち掛けてくるのだ。


 だが、俺の心にはずっと住み続けている女性ひとがいる。

 忘れたくても忘れられず。諦めようとしても諦めきれない人が。


 だから、その人にもう一度会うまでは、次の恋はしないと決めている。

 例え、この想いが実らなくとも……。納得した上で次のステップに進むために。

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