2-7 「㈱日本異界探索社」


https://kakuyomu.jp/works/16818093082344381031


◯タイトル


以前活動していた事があるため、連想するのはSCP。だいたいGPSが駄目になるやつ。

とはいえ、異常な世界の探索を株式会社として行うなら何かしらの利益を得ることが前提の組織なんだろうか。異界の危険性や怪奇性を楽しみにしたいのはもちろん、社として普段からどう動いているのかも気になる。

この前提だと異界に行くための装備を最初から整えてそうに思えるが、もし最初の情報量が大きくなってしまうと個人的には少し辛い。


◯あらすじ


ついSCPを連想してしまったが、ファンタジー寄りの様子。出現したのは扉ではなく異界そのもので、現代社会は一度崩壊。だが異界の利用が軌道に乗りだした時代。

現代的にはなっているが、端的に言えばダンジョン探窟と考えて良さそうだ。そう思うとかなり話を頭に入れやすくなる気がする。そしてダンジョンに相当するものが多彩な形を持つわけで、冒険の色が濃くなっている気配がする。出現直後ではないので全くの未知とも言えなさそうだが。

ただ、個人名はここにも一切出てこない。企業そのものが主役であり中心になる個人がない珍しい形かもしれない。


◯書き出し


異界探索担当権を巡っての競売。

シーンとしては地味だが、現代+異界+企業のこの設定ならではのオリジナリティを前面に押し出していて、現実と近いようで逸れてしまったif現実の存在感を与えてくれている。そしてそれが続きを読みたくなる動機になる。

負荷になるほど長くもなく、あらすじを読み飛ばす層も少なくないようなので必要性はあるのだろうが、やや説明的部分の文章量があるのでより圧縮されていたほうが好みではある。


◯1話


目当ての案件へ勝負に出る。これで決まり次の展開に移るかと思ったが、横槍が入る。鼻につく粘っこい声というだけで敵対的な位置付けが読み取れて分かりやすい。アオナがまだ場慣れしきれてないこと、それでも最大限仕事をこなそうと奮闘している様子が細かな描写から伝わってきて物語に入り込みやすい。

ここでライバル企業が登場してくると自社、異界にさらに展開の種が加わり盛り上がりを予感させてくれるが、最序盤にしては要素が多い気もする。


◯3話まで


追加案件を落札し、ライバル企業の嫌味を受けつつごっちゃりした街の社本部へと帰る。

2話では追加案件ゆえに案件の詳細が口で語られ、日本異界探索者の企業としての位置付けも周囲の台詞によって提示される。こういった伝え方は地の文で行われる説明のような停止感が無く、舞台の中に視点を置いたまま情報を頭に入れられるので助かる。帰り先の下町感の解像度が高く、それがカスミガセキというのがまた逸れてしまったif現実を感じる。

企画で設定した3話でおそらく目玉の部分まで辿り着けていないのは残念ではあるが、オリジナリティの一端はしっかりと見ることができたように思う。向かう方向は捉えられていないが、作り上げられた独自の舞台に期待が持てる。

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